ニュース 建設 作成日:2017年8月3日_記事番号:T00072049
台北市信義区の永春都市再開発事業をめぐり、建て替えに反対するマンションの住民3人が起こした行政訴訟で、最高行政法院が7月下旬に台北市政府の上告を却下し、台北市政府の敗訴が確定した。台北市政府は2日、昨年9月に着工した建設工事の停止を表明した。都市再開発プロジェクトの中断は初めてで、業界団体は、今後、住民の1人でも反対すれば、都市再開発がストップする恐れがあると指摘した。企業の参入意欲を損なう判決によって、今後の台湾各地の都市再開発事業への悪影響が懸念される。3日付自由時報などが報じた。
永春都市再開発の区域。手前に忠孝東路五段が走り、台北MRT(都市交通システム)板南線の永春駅すぐで、周辺には量販店や伝統市場もある好立地だ(2日=中央社)
永春都市再開発事業の対象は、2006年に計画された忠孝東路五段と松山路に面した区画1,000坪余り。森業営造による事業計画書が08年に認可された。126世帯のうち4.66世帯が同意していなかったものの、森業営造は14年9月に変更計画書を提出し、台北市政府が15年1月に認可した。
すると反対住民3人は15年2月、鑑定の評価基準日変更などが違法だとして変更計画書の撤回を求めて行政訴訟を起こした。台北高等行政法院は16年6月、台北市政府敗訴の判決を下し、これを不服とした台北市政府は上告。しかし最高行政法院は先月下旬、変更計画書の内容は変更が多過ぎるため、変更ではなく、事業計画書を再提出すべきとし、上告を却下した。
台北市政府都市再開発処は2日、着工から既に1年弱の時間が過ぎているものの、最終判決を尊重し、変更計画書と建設許可を撤回すると表明した。
都市再開発処などは16年6月の敗訴判決後、森業営造の建設許可と解体撤去許可自体には影響がないと判断。森業営造が16年7月に反対住民を立ち退かせ、16年9月末に着工していた。台北市政府の敗訴により、建設会社は賠償金を請求される可能性がある。
賛成住民、やり直しに怒り
都市再開発に同意していた住民代表は、既に建物は解体され、土地も整備しており、今さら工事停止を命じられても家がないのに、反対住民の権利を論じて一からやり直すのかと怒りを露わにし、法的手段も辞さないと述べた。
業界団体の台北市不動産開発商業同業公会の陳春銅理事長は、訴訟が都市再開発の進行を妨げる不確定要素になると指摘。やっと都市再開発の事業計画書が完成し、着工、完工しても、やり直しを命じられるのならば、民間デベロッパーは都市再開発への参入意欲を失うと懸念を示した。
台湾では12~13年にも、台北市士林区の都市再開発「文林苑」で、台北市政府が反対住民を無理やり立ち退かせ、家屋を強制撤去したとして社会問題となり、建設業者は都市再開発事業に対し扱いにくいとの印象を抱いた。今回、台湾全土の都市再開発事業の中でも指標的な地位を占めるとされてきた永春のプロジェクトが中断に追い込まれたことで、企業の参入マインドがいっそう冷え込むことは必至とみられる。
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