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電力供給が赤信号、産業界に緊張走る


ニュース 公益 作成日:2017年8月8日_記事番号:T00072135

電力供給が赤信号、産業界に緊張走る

 台北で38.5度と今年最高気温を記録した7日、台湾電力(台電、TPC)のピーク時電力供給余力は84万5,000キロワット(kW)と90万kWを割り込み、今年初めて「電力供給制限警戒」を示す赤信号が点灯した。今週金曜日の11日まで続く見通しだ。もし電力供給制限となれば、半導体、液晶パネルや石油化学、金属など24時間連続稼働が必要な業界に大きな打撃となる。産業界は、企業にリスクを強いるのでなく、停止している原子力発電所を再稼働し、電力の安定供給を図るべきと訴えた。第1~3原発の発電機6基のうち3基を停止させたままにしているため、電力不足は天災ではなく政府が招いた人災との声も上がっている。8日付工商時報などが報じた。

/date/2017/08/08/00top_2.jpg立秋の7日、台北は最高気温38.5度と、過去5番目に高い気温を記録。屋外では39度の表示もみられた(7日=中央社)

 TPCによると、7日のピーク時電力使用量は3,604万3,000kWで予想を56万kW上回った。同日の電力使用量は過去3番目に多かった。7月末の台風9号(アジア名・ネサット)で和平火力発電所(花蓮県)の送電塔が倒壊し、電力供給量が130万kW減少していることから、運転予備率も2.34%と過去3番目に低くなった。

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 もし5日連続の赤信号となれば、昨年の3日連続を上回る。電力供給余力は最低67万5,000kWと、「電力供給制限準備」を示す黒信号(50万kW以下)に近づく見通しだ。その場合、中型の発電機が故障するだけで、電力供給制限の実施を迫られる。

TPC、発電機2基稼働へ

 工商協進会(CNAIC)の林伯豊理事長は、第1原発(新北市石門区)1号機、第2原発(同市万里区)2号機を停止したままにしており、政府は全市民に節電を強要していると批判した。脱原発は正しい方向だが、代替エネルギーを確保しつつ進めることが大前提だと強調した。

 同日付中国時報は、第1原発1号機と第2原発2号機発電機の設備容量は合計160万kWで、再稼働すれば2日後には電力を供給でき、赤信号を解決できると報じた。

 一方、行政院の徐国勇報道官は、第1原発1号機、第2原発2号機の再稼働は検討しておらず、13日には和平火力発電所の送電塔の第一次修復が終わると説明した。

 TPCの朱文成董事長は、大潭発電所(桃園市観音区)の緊急発電機1号機がきょう8日から、大林火力発電所(高雄市小港区)1号機はあす9日から稼働できる予定で、電力供給不足が緩和すると強調した。

 大潭発電所の1号機は設備容量30万kWで、初日は7万kW、翌日は15万kWを見込む。大林火力発電所の1号機は当面20万kWの見通しだ。

企業の海外移転懸念も

 ある企業は、電子業界や石油化学業界は生産ラインを24時間連続稼動させているので、電力供給制限が起きた場合、生産量が減少するだけでなく、生産設備の停止・再開によるリスクが増すと指摘。電力の安定供給が確保できない環境では、海外への移転が進む恐れがあると懸念を示した。

 電力不足など台湾投資環境の悪化を理由に米国投資がうわさされる台湾積体電路製造(TSMC)は7日、3ナノメートル製造プロセスの新工場は台湾が優先で、来年上半期に設置場所を決定すると説明した。

午後の冷房再開か

 行政機関は節電のため午後1~3時の間、冷房の使用を停止しているが、職員や来訪者から不満が続出しているため、あす9日より温度28度に制御しつつ取りやめを検討している。節電効果は2時間で20万~30万kWだった。

 交通部では7日午後3時、冷房を再開した瞬間にビル全体が停電し、さらに30分間近く蒸し暑い中での業務を強いられた。午後3時に一斉に冷房を付けたことで、電力供給系統の電圧が急低下し、自動保護システムが作動したためだという。立法院の立法委員事務所がある中興大楼でも1分間の停電が起きた。

 衛生福利部(衛福部)の統計によると、8月1~6日に熱中症などで病院で受診した人は141人と、前年同期比38%増えた。このまま猛暑が続けば、昨年7月の668人を超え、過去最高を更新する可能性がある。

 衛福部は、午前10時~午後2時の外出を避け、めまいなどの症状があればすぐに病院で受診するよう呼び掛けた。

【表】