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最低賃金5%引き上げ検討、 産業団体反発「一例一休に追い打ち」


ニュース その他分野 作成日:2017年8月15日_記事番号:T00072294

最低賃金5%引き上げ検討、 産業団体反発「一例一休に追い打ち」

 労働部は来年の最低賃金を5%引き上げ、月給は2万2,059台湾元(約8万円)、時給は140元とすることを検討している。実現すれば2年連続での5%引き上げで、産業団体は、企業にとって一例一休(週休2日制)によって経営コストが増大した中で新たな負担要因となるとして強く反発している。15日付自由時報などが報じた。

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 基本工資審議委員会(最低賃金審議会)は18日に会議を開催する。委員の1人は、今年上半期は景気が良く、台湾企業の営業利益は過去数年で30%以上増加しているのに、労働者の賃金は低いままと指摘し、引き上げは妥当との考えを示した。

 労働部の試算によると、最低賃金の引き上げにより、台湾人労働者122万人、製造業、建設業、漁業などの産業に関わる外国人労働者41万人、時給計算で働くパート・アルバイト40万人の収入が増える見通しだ。

「恩恵は外国人労働者だけ」

 中華民国工商協進会(CNAIC)の林伯豊理事長は、最低賃金引き上げは外国人労働者が恩恵を受けるだけで、人件費がかさむ分、台湾人労働者の賃上げがますます困難になるとして反対を表明した。最低賃金水準での給与支給は、全民健康保険や労工保険加入のために台湾元でも支給が必要な海外駐在員が100万人余りを占め、その他の台湾人労働者は24万人しかおらず、残りは外国人労働者41万人だと指摘。また、最低賃金を大幅に引き上げれば、企業は生き残りのため、東南アジアや米国など海外に逃げ出すと訴えた。

/date/2017/08/15/00lin_2.jpg林理事長は、最低賃金の5%引き上げは過大で、昨年も5%上げているため今年は見送るべきと憤った(14日=中央社)

 中華民国全国工業総会(工総、CNFI)の蔡練生秘書長は、一例一休で企業のコストが上昇したので、まず社会的弱者を救済するため、最低賃金の月給は引き上げず、最低賃金の時給だけ引き上げてはどうかと提案した。

 中華民国中小企業総会の林慧瑛理事長は、台湾人労働者の大部分は最低賃金で働いておらず、過去16年に何度も最低賃金を引き上げたものの、実質平均給与は下がっていると指摘した。台湾の9割を占める中小企業は、一例一休に最低賃金の引き上げが加われば、業務縮小や倒産が相次ぐと懸念した。

 一方、労働団体、台湾労工陣線の孫友聯秘書長は、現在の最低賃金は月2万1,009元で台湾の生活水準とかけ離れていると指摘した。企業側は公務員の給与凍結を理由に最低賃金見送りを主張しているが、単なる言い訳だと批判した。

時間外の上限緩和で不満解消も

 15日付工商時報によると、労働部は一例一休導入による人件費増加に配慮して、最低賃金を年初に2%、年央に3%引き上げるといった段階的な手法や、年初に最低賃金の時給を引き上げ、年央に最低賃金の月給を引き上げるなどの方法を検討しているようだ。また、時間外労働時間の上限を月46時間から54時間に引き上げる労働基準法(労基法)改正を今年末に行い、来年から施行することで、産業界の不満を和らげることも考えているという。一方、一例一休を見直す労基法改正が最低賃金より先だとの産業界の主張に対しては、法改正する計画はないと強調した。

 以前の国民党案では、一例一休導入に伴い、時間外労働時間の上限を月46時間から54時間に引き上げることで産業界と合意していたが、実際には昨年末の改正労基法に盛り込まれなかったため、産業界から批判が相次いでいた。

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