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《17県市大規模停電》ASEなど工場一時停止、製造業の被害数億元か


ニュース その他分野 作成日:2017年8月16日_記事番号:T00072301

《17県市大規模停電》ASEなど工場一時停止、製造業の被害数億元か

 15日午後5時前、大潭火力発電所(桃園市)のトラブルによる運転停止を契機に17県市に及ぶ大規模停電が発生し、半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)最大手、日月光半導体製造(ASE)の高雄工場をはじめ、各地の工業区で多くの企業の生産ラインが一時停止した。経済部工業局が被害額を集計中だが、産業界では数億台湾元(1元=約3.65円)と予想している。中華民国中小企業総会は、電力会社による大規模集中発電設備だけに頼らず、需要地に分散型電源を配置するなどの補完措置が必要と政府に今後の対策を提言した。16日付工商時報などが報じた。

/date/2017/08/16/00top_2.jpg大潭火力発電所。わずか1カ所でのトラブルが台湾全土規模停電を引き起こし、電力供給システムの脆弱さを見せつけた(15日=中央社)

 新竹科学工業園区(竹科)、中部科学工業園区(中科)、南部科学工業園区(南科)の管理局は、夕方の突然の停電では入居企業に影響はなかったが、夜間の計画停電(輪番停電)で、竹科の竹南園区や南科などの一部企業が影響を受けたと説明した。

 半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)最大手、日月光半導体製造(ASE)は高雄K21、K22工場が午後8時過ぎまで60分間停電した。同業大手、南茂科技(チップモス・テクノロジーズ)は竹北工場(新竹県)と南科の台南工場の生産ラインが2時間停止し、徐々に再開したが、その後、台南工場は午後9時前に計画停電に当たった。

 桃園市の中壢、幼獅、富岡、永安の各工業区などでも一部工場の生産ラインが停止した。土城工業区(新北市)、観音工業区(桃園市)、大武崙工業区(基隆市)なども停電した。

 太陽電池用シリコンウエハー大手、緑能科技(グリーン・エナジー・テクノロジー)は観音工場が一時停電し、予備電源で乗り切ったが、同日の生産が15%減少した。

3大園区の半導体・パネル、影響なし

 一方、3大科学園区の半導体や液晶パネルメーカーは高圧系統のため停電が発生しなかった。

 ファウンドリー最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は、竹科、中科、南科の生産ラインはいずれも通常通りで影響はなかったと説明した。なお同社は以前、半導体メーカーは電力の安定供給が必要だが、自社で発電所を建設する計画はないと表明している。

 竹科の聯華電子(UMC)、華邦電子(ウインボンド・エレクトロニクス)、旺宏電子(マクロニクス・インターナショナル)も電力供給は正常で生産ラインに影響はなかったと説明した。桃園工場を8月に稼働させた南亜科技(ナンヤ・テクノロジー)も停電の影響はなかった。

 液晶パネル大手、友達光電(AUO)、群創光電(イノラックス)も影響はなかった。

中小企業に緊張感

 中華民国中小企業総会の林慧瑛理事長は、現在はメーカーの需要期のため半日の停電でも影響が大きいので、気温が上昇し、供給予備率が低下する中、中小企業は緊張の日々を送っていると語った。

 その上で、政府の脱原発目標は素晴らしいが、補完措置が全くできていないと指摘。産業、都市部、住宅など、それぞれに向けて独立した電力システムの構築を提言した。また、中小企業はコストがかかるクリーンエネルギーの採用が難しいため、政府の補助金や奨励金を普及の条件として挙げた。

 中華民国全国商業総会(商総)の頼正鎰理事長は、会員企業のうち百貨店、ホテル、物流、葬儀などにとっても電力供給は非常に重要だと指摘した。例えば、物流の冷凍倉庫には血漿(けっしょう)など医療材料も多く保管されており、停電の時間が長引けば廃棄せざるを得ないと話した。

原発再稼働の議論再燃か

 中華民国工商協進会(CNAIC)の林伯豊理事長は、クリーンエネルギーの電源構成は20%未満のため、原子力発電所を選択肢に入れなければ、必ず電力不足が起こり、台湾企業や外資が台湾に投資しなくなると主張した。

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 中華民国全国工業総会(工総、CNFI)の蔡練生秘書長は、先月は送電塔の倒壊、きのうは大規模停電と続いており、電力不足の心配がなくならなければ、台湾への投資が減ってしまうと訴えた。

 これに対し行政院の徐国勇報道官は、原発の再稼働は検討しないと改めて表明した。

【図】