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先住民の抗日事件、名誉回復を求める声


ニュース 社会 作成日:2017年8月21日_記事番号:T00072396

先住民の抗日事件、名誉回復を求める声

 日本統治時代初期、日本政府による統治に反発する先住民族が蜂起した「抗日戦」について最近、日本側から見た「野蛮で好戦的な『蕃人』を討伐した」との見方だけでなく、「同胞や先祖伝来の土地を守るための尊い戦いだった」という歴史認識を確立し、先住民の名誉を回復すべきとの声が高まっている。

 花蓮県の山間部に位置する卓渓郷は1904~40年にかけて、古くからこの地に暮らしていたブヌン族が日本政府の統治政策に不満を抱いて抵抗を繰り返したことから、日本側との衝突が発生した地域として知られる。

 その後、日本政府が台湾支配を確立したため、植民地時代後期、先住民との衝突の中、同地で亡くなった日本の警察官らを「殉職者」として顕彰する記念碑が相次いで建立され、こうした碑が現在も17基残されている。

 しかし日本側以上に死者を出した先住民たちのための記念碑は皆無であるため、卓渓郷公所(役場)がこのほど原住民族委員会(原民会)に対し、抗日戦で亡くなったブヌン族の記念碑建立を申請した。ところが、同地は玉山国家公園内に位置することから、規定によって記念碑の建立は禁じられているとの理由で却下されてしまった。

 これを受けて卓渓郷公所農業・観光課の高栄生課長は、「先住民と戦って亡くなった警察官の『功績』を称える記念碑しかなければ、ブヌン族の子孫は日本の視点で書かれた碑文を見て自分たちの祖先が『好戦的な野蛮人』と誤解する恐れがある」と訴えている。

 高課長はまた、政府は台日間の対立を避けたいと考えている可能性があるが、ブヌン族のための記念碑建立で恨みをかき立てたいわけではなく、「祖先は自分たちの土地を守ろうと戦った」という事実を子孫に伝えたいだけだと強調。建立した記念碑を平和の象徴としたい考えを示した。

 なお原民会の伊万・納威(Iwan Nawi)副主任委員(セデック族)は、「玉山国家公園の規定が緩和され、日本側の記念碑全てのそばに先住民の視点に立った記念碑を建立し、双方の史観を並列させ、同時に先住民が歴史に対する発言権を取り戻せるよう希望する」とコメントした。

 多くの先住民が暮らす花蓮県では数多くの抗日事件が発生しているが、1908年にアミ族と日本の警察が衝突し、一つの集落が消滅させされた「七腳川事件」が起きた現在の吉安郷では、5年前にアミ族の死者を記念する碑が建立されたり、タロコ族と日本の警察が18年にわたる抗争を繰り広げた秀林郷では、郷公所が大学と共同で歴史の真実に迫るドキュメンタリーを製作するなど、先住民の名誉回復を目指す動きが強まっている。