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「かまどで作る碗粿」が看板の老舗、大気汚染の罰金で廃業


ニュース 社会 作成日:2017年9月14日_記事番号:T00072873

「かまどで作る碗粿」が看板の老舗、大気汚染の罰金で廃業

 台湾を代表する小吃(軽食)の一つで、お碗の中にすりつぶした米と豚肉やエビ、しいたけなどの具を入れて蒸し上げる料理「碗粿(ワーグイ)」。その碗粿を約50年にわたり販売してきた高雄市旗山区の「阿嬤碗粿」が、このほど閉店することとなった。同店ではまきを使ってかまどで蒸す伝統的な製法を守ってきたが、その際に出る煙が大気を汚染しているとの理由で当局から罰金処分を受け、閉店を余儀なくされた。

 台湾のどの家庭にもかまどがあった時代、あらゆる料理がまきで起こした火によって調理されていたが、近年、天然のまきを燃料に使っていることをうたう伝統的小吃店が増えており、昔なつかしい風味が人気を呼んでいる。

 一方、環境保護意識の高まりから、まきを燃やす際に出る煙が大気汚染につながるとの指摘も出ており、こうした零細業者は、いったん罰金処分を受ければ店をたたむしかない状況に追い込まれる。

 高雄市旗山区の路上で50年近く営業してきた「阿嬤碗粿」は、まきの火を使って、煮玉子、油葱酥(油で揚げたネギ)、干し大根を具に使った昔ながらの碗粿を作り続けており、「この店のものを食べて大きくなった」という常連も多い。しかし環境保護局(環保局)にたびたび検査を受けるようになり、80歳になる女性店主は先月、かまどの火を落とすことを決めた。

 2回ほど指導を受け、5,000台湾元を超える罰金処分を受けたという店主は、当局が法に従って取り締まりを行うことを責めてはいないものの、「糊口をしのぐだけの商売にとってこの法律は厳し過ぎる」とこぼした。周辺地域では同店だけでなく、まきを使った豆花(豆腐のデザート)店も閉店に追い込まれたほか、炭火焼き香腸(台湾式ソーセージ)や包子(中華まんじゅう)店も相次いで指導を受けているという。

 こうした状況に常連客からは「昔なつかしい味が消えてしまうのは惜しい」との声が出ており、グルメ研究家の邱国源氏も「伝統的製法で作られた料理は風味が違い、歴史的、文化的価値がある」と指摘。政府に対し、閉店に追いやらずに大気汚染を改善できるような指導にとどめるべきと提言している。