ニュース 電子 作成日:2017年9月22日_記事番号:T00073011
スマートフォン大手、宏達国際電子(HTC)の王雪紅(シェール・ワン)董事長は21日、グーグルにスマホ受託生産部門を11億米ドルで売却後、自社ブランドのスマホとVR(仮想現実)端末に注力すると表明した。2011年をピークにスマホ販売台数が減少し続け、9四半期連続の赤字に陥っているHTCに現金収入をもたらし、従業員の雇用を守ると評価する声がある一方、研究開発(R&D)人材を手放すことは核心を失うに等しく、VR市場は価格競争が激しい上、規模もスマホほど大きくないと、同社の再起を危ぶむ見方が出ている。22日付工商時報などが報じた。
王HTC董事長(右2)は、グーグルは10年来の提携パートナーで、売却は従業員にとって素晴らしいことだと述べた。しかし、売却せずに済んでいた方が素晴らしかったのは言うまでもない(21日=中央社)
HTCは、2018年明けにグーグルに対し、グーグルのスマホ「ピクセル」受託生産に関わった受託生産部門「Powered by HTC」の2,000人を移籍させ、特許などをライセンス供与する。
HTCの張嘉臨総経理は、グーグルへの売却で、従業員の生活を守り、HTCの自社ブランドを永続させ、グーグルの台湾投資を増やすことができると説明した。売却後もHTCにはR&D部隊2,000人が残っており、スマホ、VR、MR(複合現実)、IoT(モノのインターネット)などの製品開発を行うと述べた。
HTCの従業員は現在1万2,000人。HTCは2015年以降の累積損失が340億台湾元(約1,300億円)近く、年間100億元の現金を必要とするが、今年第2四半期で現金が300億元しか残っていなかった。
成長の柱、不在に
HTCの株価は22日、寄り付き直後に76.2元でストップ高となった。
ドイツ証券は、短期的には11億米ドルの売却益で財務状況が改善するが、中長期的にみれば、利益を生み出す「キャッシュ・カウ(金のなる木)」だったグーグルのピクセルの受託生産業務を失うことで、赤字が続く恐れがあると予測した。
アップルウオッチャーとしても名高い元バークレイズ・キャピタル証券総経理の楊応超氏は、HTCはR&D力が弱まり、来年のスマホ販売台数は数百万台にとどまって、市場シェアを徐々に失っていくと予測した。VR市場はスマホほど大きくないのに、スマホ受託生産業務を売却することは「鶏を殺して卵を得る」ようなもので、HTCに必要なのはキャッシュでなく、売上高や利益の成長だと指摘した。ただ、もしHTCが2年前にスマホ受託生産業務を売却していれば、2倍の値段で売れたと述べた。
ASUS、唯一の台湾ブランドへ
HTCは97年設立当初は受託生産を行い、07年に自社ブランドに参入した。08年には世界初のアンドロイドOS(基本ソフト)スマホ「HTCドリーム」を発売し、11年にはスマホ販売台数を4,300万台まで伸ばした。市場シェアは当時10%を超えたが、アップルやサムスン電子との戦いに敗れた上、中国ブランドの追撃を許し、今やシェアが0.68%まで縮小している。
HTCはスマホ不振をカバーするため、16年にVR対応ヘッドマウントディスプレイ(頭部装着ディスプレイ、HMD)「HTC Vive」を発売した他、グーグルの「ピクセル」でスマホ受託生産を再開していた。
市場では、HTCはリベンジを果たせず、台湾のスマホブランドは華碩電脳(ASUS)だけになるとみられている。ASUSはコストパフォーマンスが高い「ZenFone」シリーズで人気を博し、15年に出荷台数を2,000万台に伸ばして初めてHTCを追い抜いた。沈振来(ジェリー・シェン)執行長は、来年はアップル、サムスン、中国4社に次ぐ、世界7位の稼げるスマホブランドになることが目標だと述べている。
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