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TSMC、「AI向けHPCが成長の柱に」


ニュース 電子 作成日:2017年10月20日_記事番号:T00073475

TSMC、「AI向けHPCが成長の柱に」

 ファウンドリー世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の劉徳音(マーク・リュウ)共同執行長(CEO、最高経営責任者)は19日、AI(人工知能)などに応用できる高性能計算(ハイパフォーマンスコンピューティング、HPC)は今後5年の売上高の年平均成長率(CAGR)10%以上が見込め、2020年に同社の成長の柱になると述べた。TSMCは来年上半期の7ナノメートル製造プロセス量産で競合をリードする構えで、テープアウト(設計完了)する50件のうち半分がHPCだと明かした。20日付経済日報などが報じた。

/date/2017/10/20/00tsmc_2.jpg劉共同執行長(右)と魏共同執行長(左)は「引き継ぎは順調」と声をそろえた(19日=中央社)

 劉共同執行長は同日の決算説明会で、AIは非常に重要な成長エンジンで、主にディープラーニング(深層学習)やデータセンターで、高機能のGPU(グラフィックスプロセッサー)、CPU(中央演算処理装置)、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)、ASIC(特定用途向けIC)が必要になると説明した。HPCチップ市場規模は115億米ドルを見込む。

 何麗梅財務長(CFO、最高財務責任者)は、今年の設備投資は108億米ドル(8億米ドル上方修正)で過去最高、うち7割を10ナノプロセスと7ナノプロセスに充てると述べた。7ナノプロセスは50件のテープアウトを予定しており、HPCが半分を占めると説明した。

 劉共同執行長らは、EUV(極端紫外線)リソグラフィー技術を初めて導入する第2世代の7ナノプロセス(7ナノプラス)は来年テープアウト、19年に量産すると説明した。5ナノプロセスでもEUVリソグラフィー技術を採用し、19年上半期にリスク生産(試験的な生産)、20年に量産すると述べた。

IoT売上高、10億ドル

 TSMCは、今後の4大商機としてHPCをはじめ、▽スマートフォン▽IoT(モノのインターネット)▽カーエレクトロニクス──を掲げている。

 スマホについて劉共同執行長は、AI機能、AR(拡張現実)とVR(仮想現実)機能搭載の増加や、4G(第4世代移動通信システム)から5Gへの転換で、17~21年市場の年平均成長率は6%が見込めると述べた。同社売上高にはハイエンド機種の方がロー~ミドルエンド機種より貢献すると語った。

 魏哲家共同執行長は、IoTはTSMCに今年既に10億米ドルの売上高をもたらしたと述べた。

 TSMCは来年6月に張忠謀(モリス・チャン)董事長が引退し、劉共同執行長が董事長に、魏共同執行長が総裁に就任する。張董事長の引退発表後、初めてメディアの前に登場した劉共同執行長と魏共同執行長は、これまでも2人で協力してきており、新ポスト就任後も懸念はないと話した。

ビットコイン向けも高成長

 TSMCが発表した第3四半期連結売上高は2,521億700万台湾元(約9,400億円)で前期比17.9%増、前年同期比3.2%減だった。粗利益率は49.9%へと前期比0.9ポイント下落、前年同期比0.8ポイント下落した。純利益は899億2,500万元で前期比35.7%増、前年同期比7.1%減だった。アップルの新プロセッサー「A11バイオニック」とビットコイン向けASICが貢献し、10ナノプロセスの売上高構成比が10%に拡大した。何財務長は、10ナノプロセスは量産が始まったばかりで粗利益率が下がったと説明した。

/date/2017/10/20/01tsmc_2.jpg

 あるサプライヤーによると、ビットコインの採掘(マイニング)は高い半導体技術が必要で、今後HPCの応用拡大が見込まれる。

 何財務長は、1米ドル=30.3元として第4四半期連結売上高は91億~92億米ドル、粗利益率は48~50%と予測を示した。今年通年の連結売上高は前年比8.8%増で過去最高を更新すると見通しを示した。来年は5~10%成長を見込む。

 劉共同執行長は、今年の世界の半導体業界の成長率予測を16%へと、前期時点の予測12%より引き上げた。うちメモリーは51%成長、メモリー以外は6%成長の予測だ。ファウンドリーは7%成長へと、従来予測6%成長より引き上げた。

【図】