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高雄の交通公共機関、大気汚染対策で3カ月無料化


ニュース 運輸 作成日:2017年11月29日_記事番号:T00074202

高雄の交通公共機関、大気汚染対策で3カ月無料化

 高雄市は28日、大気汚染対策のため、12月1日から3カ月間、高雄MRT(都市交通システム)など公共交通機関でICカード利用者を対象に運賃を無料化すると発表した。冬季の大気汚染が極めて深刻なため、大気汚染物質の発生源となるバイクや自家用車の利用を減らすことを目的とした、台湾初の大胆な取り組みだ。ただ、市民に公共交通機関の利用習慣が根付かない限り、効果は一時的との指摘もある。29日付聯合報などが報じた。

/date/2017/11/29/00lrt_2.jpg高雄LRTの背後の建物が、空気が悪いためかすんで見える。秋から春にかけての日常的な光景だ(28日=中央社)

 高雄MRTは12月1日~来年2月末の期間、平日朝夕の通勤通学時間帯の▽午前6時30分~8時30分▽午後4時30分~6時30分──、バスやライトレール(軽量軌道交通、LRT)は全日、悠遊カード(イージーカード)、一卡通(Iパスカード)などICカードの利用で運賃が無料になる。ただしLRTはIパスカードとハッピーキャッシュしか使えない。通常運賃は高雄MRTが20台湾元(ICカード利用割引で17元)から。無料化プロジェクトの予算は2億1,000万元(約7億8,000万円)で、期間終了後に延長するかを検討する。

 陳菊高雄市長は、冬季は中国大陸の乾燥地帯の黄砂や沿岸部で発生した汚染物質が高雄に流れ込むため、大気汚染が最も深刻だと指摘した。

 高雄市は29日、大気汚染の指標、空気質指数(AQI)が赤(指数151~200・全ての人にとって不良)となった。10月と11月は1カ月のうち11日が赤で、年初来では66日に上った。

 高雄市環境保護局の分析によると、高雄市の冬季の大気汚染物質の発生源は、▽高雄市▽その他県市▽海外からの飛来──が各3分の1ずつだ。高雄市では移動発生源(自動車、バイクなど)が38%を占める。

利用拡大、疑問視も

 環保局の試算によると、無料化プロジェクトによって、高雄MRTとLRTの利用は延べ162万人、市内バスの利用は延べ176万人、高速バスの利用は延べ7万人増える見込みだ。黄家俊・環保局空噪科長は、自動車の利用が延べ86万回、バイクが延べ259万回減少し、二酸化炭素排出量が1万6,000トン余り減少すると予測を示した。

/date/2017/11/29/00top_2.jpg陳高雄市長(中)は、今年10月に開催した「エコモビリティ・ワールドフェスティバル」で、一部地区でガソリン車の侵入を禁止したところ、炭化水素が25%減少したと指摘し、成果に期待感を示した(高雄市環保局リリースより)

 蔡孟裕・環保局長は、過去に公共交通機関の運賃無料化を実施した際は利用者が20%増えたので、今回も少なくとも15%増えると予測した。環境保護団体から、高雄MRTも全日運賃を無料化するよう要望があったが、予算が7億元もかかるので、時間帯を指定したと説明した。

 一方、中山大学公共事務管理研究所の呉済華教授は、高雄MRTは長年赤字が続いていたので経営面からは好ましくないと指摘。以前実施した公共交通機関の運賃無料化では、終了後に利用者数が元に戻っており、効果は一時的との見方を示した。その上で、高雄市民は公共交通機関を毎日利用する割合が10%と、台北市の50%、シンガポールの70%、香港の70~80%と比べて低いため、利用習慣を根付かせることが重要と指摘した。

 市民の間では、運賃無料による公共交通機関の利用促進を支持する声がある一方、税金投入に反発する声や、勤務先の近くに高雄MRT駅はなく、バスは待ち時間があるので、運賃無料でも自家用車やバイクで通勤するなどの声が聞かれた。

他県市は追随せず

 陳市長は、公共交通機関の運賃無料化は、工業都市で大気汚染が深刻な高雄市の事情によるもので、他県市の追随はふさわしくないと述べた。

 台北市政府交通局は、台北市は6直轄市で最も大気がきれいな上、台北MRTは1日延べ400万人が利用しており、2日無料にしただけで補助金が1億元かかるため、高雄MRTの運賃無料化には追随しないと説明した。

 台中市政府交通局の王義川局長は、既にバスの乗車10キロメートル以内の運賃無料化を実施しており、来年は電気バスを150万台へと現在の70万台から倍増させると述べた。

 台南市の李孟諺・代理市長は、台南市で公共交通機関の運賃無料化を3カ月間実施すれば1億2,000万元以上かかるので、大気汚染が深刻な場合に屋外での勤務や学校の授業を休止する措置を検討していると述べた。