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台中発電所の石炭使用量24%削減命令、来夏の電力供給に懸念


ニュース 公益 作成日:2017年11月30日_記事番号:T00074230

台中発電所の石炭使用量24%削減命令、来夏の電力供給に懸念

 台中市政府環境保護局(環保局)は29日、台湾電力(台電、TPC)の台中石炭火力発電所の発電機9基の操業許可証延長を認可した一方、石炭の年間使用量を2,100万トンから1,600万トンに24%削減する条件を課した。深刻化する大気汚染対策の一環だが、来年の夏期の電力供給逼迫(ひっぱく)を促す懸念があり、電力料金が引き上げられる可能性もある。30日付経済日報などが報じた。

/date/2017/11/30/00top_2.jpg各地でマスクを着用する姿が多く見られた(29日=中央社)

 台中市環保局の白智栄局長は、発電機9基の操業許可証の延長期間は来年2月25日から2年間で、来年2月24日まで3カ月間の移行期間を設けると説明した。もし石炭使用量削減を実行できなければ、「台中市公私場所管制生煤および禁用石炭焦自治条例」に基づき、最高100万台湾元(約370万円)の罰金を、日数に応じて連続で科すと述べた。

 石炭使用量の削減幅を24%としたことについて白局長は、11月24日に追加提出された延長許可の申請書類に、石炭使用量を15%削減するとあったが、自治条例の目標値と差が大きかったためと説明した。台中火力発電所は11月6日に第1~8号機および第10号機の操業許可証の延長を申請したものの、石炭使用量や大気汚染物質排出量の削減について触れておらず、政府の環境保護政策に合致していないとして却下されていた。

 ただ、台中火力発電所の実際の石炭の年間使用量は平均1,840万トンのため、実質13%の削減にすぎない。環境保護団体から「市民を欺いている」「PM2.5(微小粒子状物質)が心血管疾患を招く」「呼吸する権利を返せ」などと批判が相次いだ。

LNG、発電コスト39億元増

 TPCの林徳福広報担当者は、台中市政府から命じられた石炭使用量の削減(500万トン)は、TPCの当初計画(315万トン)と185万トンの差があると指摘。これにより、台中火力発電所の発電量が45億キロワット時(kWh)減少し、全土の発電量の2%に相当するため、影響が非常に大きいと述べた。液化天然ガス(LNG)火力発電で代替する場合、LNGが60万トン必要と指摘した。石炭火力発電による発電は1kWh当たり1.31元、LNGは2.18元で、発電コストが39億元増える計算だ。

 来年夏期の電力供給への影響について経済部は、TPCがLNG火力発電での代替を試算中で、数日中に明らかになるとコメントした。経済部能源局(エネルギー局)の林全能局長は、来年4月に電力料金の見直しについて協議すると述べた。

 このほか高雄市環境保護局(環保局)も、TPCの興達発電所(石炭、LNG)に対し、石炭使用量を20%削減し、LNGに切り替えることを条件に、来年3月まで操業許可証を延長した。

今秋で最悪の大気汚染に

 台湾では29日、今秋で最も深刻な大気汚染に見舞われ、大気汚染の指標、空気質指数(AQI)は全土76カ所の観測拠点うち西部35カ所で赤(指数151~200・全ての人にとって不良)となった。行政院環境保護署(環保署)は、来月2日まで高雄市・屏東県では「赤」、雲林県・嘉義県市・台南市では「オレンジ(101~150・大気汚染に敏感な人にとって不良)」が続くと予想した。

 高雄長庚医院・児童過敏免疫風湿科の郭和昌医師は、喘息(ぜんそく)の発作で受診する子供が前月より2~3倍に増えており、PM2.5を多く吸い込んだことが原因と推測した。台北市の馬偕紀念医院・小児過敏免疫科の徐世達主治医師も、大気汚染で喘息が2割増えていると指摘した。新光医院・胸腔内科の高尚志主任は、大気汚染が深刻な日は外出を控え、外出する場合はマスクを着用するよう呼び掛けた。