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サムスン有機EL増産凍結か、AUOの慎重判断に評価


ニュース 電子 作成日:2018年1月25日_記事番号:T00075219

サムスン有機EL増産凍結か、AUOの慎重判断に評価

 韓国メディアの報道によると、サムスンディスプレイ(SDC)がフレキシブル有機EL(OLED)パネル新工場(A5工場)の年内稼働予定を見送るもようだ。大口顧客アップルのスマートフォン新機種iPhoneX(テン)の販売不振、および中国スマホ販売の減速が原因とみられている。投資が巨額な割に収益が見込めないと、有機ELパネル投資に慎重だった友達光電(AUO)の判断が正しかったのではないかと注目されている。25日付自由時報などが報じた。

/date/2018/01/25/00iPhoneX_2.jpgアップルはiPhoneXで初めて有機ELパネルを搭載し、他社の追随が相次いだが、今年も引き続き液晶パネル搭載モデルを発売するとみられている(アップルリリースより)

 SDCは昨年7月、韓国・忠清南道牙山(アサン)で1兆ウォン(約1,030億円)を投じてフレキシブル有機ELパネルA5工場を建設すると発表した。ただ過去半年の間、工場予定地は整地作業が繰り返され、着工する気配がない。A5工場関連の設備の発注は既に取り消された。業界では当初、今年下半期に設備搬入が始まると見込まれていたが、計画を見直している最中との観測が浮上している。

 SDCのフレキシブル有機ELパネル生産の主力A3工場は月産能力15万枚。今年稼働予定のA4工場は月産能力6万枚で、スマホ2,000万~3,000万台に対応する。A5工場も稼働すれば、SDCの有機ELパネル生産能力は18万~27万枚に上る見込みだった。

 SDCは従来、親会社のサムスン電子とアップルの受注が中心だったが、近年は中国スマホブランドの受注も増えている。しかし、iPhoneX販売不振の市場観測が相次ぐ中、ストラテジー・アナリティクスによると、中国スマホ出荷台数は昨年第3四半期が前期比3.1%減の1億1,700万台、昨年第4四半期が4.3%減と減速している。

 一方、韓国メーカーを追い掛け、中国、日本メーカーも有機ELパネル投資を進めてきた。京東方科技集団(BOEテクノロジーグループ)は四川省成都市の第6世代B7工場、四川省綿陽市の同B11工場でフレキシブル有機ELパネルの月産能力が9万6,000枚に上る。深圳市華星光電技術(CSOT)は、湖北省武漢市の第6世代T4工場のフレキシブル有機ELパネル月産能力が4万5,000枚だ。

 鴻海精密工業傘下のシャープは今年上半期にも有機ELパネルを量産する予定だ。

 なお、IHSマークイットが24日発表したレポートでは、昨年のスマホ用パネル出荷規模は前年比33%増の448億米ドルで、有機ELパネルが45%を占めており、今年は液晶パネルを上回るとの見通しが示された。

車載用LTPSに注力

 AUOは昨年、有機ELパネルは腕時計型ウエアラブル(装着型)端末(スマートウオッチ)やバーチャルリアリティー(仮想現実、VR)端末など、高単価の製品にしか使用されないと予測。日韓メーカーが大規模投資を行っても、投資額1元当たり売上高は0.3~0.4元しか増えないと慎重な立場を示していた。

 AUOは今年、LTPS(低温ポリシリコン)パネルで電気自動車(EV)市場を開拓し、車載用パネル出荷の2桁成長を維持する見通しだ。

 彭双浪(ポール・ポン)董事長は、自動車はコンソール、インストルメントパネル(インパネ、計器盤)の他、バックミラー、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、後部座席の車載インフォテインメント(情報・娯楽)システム(IVI)、サンルーフに取り付けられるフリップダウンモニターなど、車載ディスプレイが増えており、しかも電気自動車自体が電力を消費するため、省電力がパネル選択の重要なポイントになると指摘した。LTPSパネルは省電力、高解像度、高輝度なので、電気自動車に向いており、電気自動車の普及が自動車のサプライチェーンに大きな変化をもたらすと述べた。

 AUOのLTPSパネル第6世代工場は月産能力2万5,000枚。これまでは画面アスペクト比18:9のハイエンドのスマホやノートパソコン用パネルをターゲットとし、昨年第4四半期にフル稼働に達した。