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原発被災地食品、輸入規制緩和方針を発表


ニュース 食品 作成日:2018年1月30日_記事番号:T00075281

原発被災地食品、輸入規制緩和方針を発表

 衛生福利部(衛福部)は29日、2011年3月の福島第1原子力発電所の事故以来続けてきた、周辺5県産の食品に対する厳しい輸入規制措置を緩和する方針を公表した。日本が主導する「包括的および先進的TPP協定(CPTPP、TPP11)」への加入交渉を見据え、緩和を求める日本の圧力にこれ以上抵抗するのは台湾全体の利益上、得策ではないとの判断によるものだ。ただ、市民の間では被災地食品への懸念は依然根強く、実現までには紆余(うよ)曲折も予想される。30日付聯合報などが報じた。

/date/2018/01/30/00tfda_2.jpg緩和方針を発表する陳衛福部長(左)。今年は年末に統一地方選挙が控えており、時期が遅くなるほど緩和を実行しにくくなるため、蔡政権としては早期に進展させたい考えだろう(29日=中央社)

 陳時中衛福部部長は同日の新春記者会見で「原発事故から既に何年もたっており、日本食品に対する政策も見直す必要がある。米国の事例に倣い、ハイリスク食品は輸入を規制するという方向で考えたい」と発言。何啓功衛福部次長は、日本から度重なる圧力があったと前置きした上で、台湾も国際貿易の現状に従って手法を改めるべきで、輸入規制措置を現在の特定地域一律から、食品の放射能汚染リスクに応じたものに変えるよう、既に行政院に提案したと明らかにした。

 台湾は現在まで、福島産の全食品、および群馬、栃木、茨城、千葉産の茶類、飲用水、乳児用粉ミルク、生鮮水産品は全面禁輸とし、福島以外の4県産のその他の食品に対して産地証明書と放射能基準適合証明書の付帯を義務付けている。また、米国と日本で販売できない食品の輸入を禁止している。

中国の緩和報道で「孤立化」懸念

 カナダ、メキシコ、ニュージーランドなど日本産食品の輸入を全面解禁している国もある中で、台湾の措置は中国と並んで世界で最も厳しく、日本は「世界貿易機関(WTO)の協定に違反している」などと反発、日台間の経済連携協定(EPA)締結交渉を停止するなど、圧力を掛けつつ台湾側に輸入規制の緩和を迫ってきた。

 こうした中、今月1日、中国が緩和を進める方針と報じられたため、台湾のみが厳格な規制を続けた場合、CPTPP加入交渉にも悪影響が出て、台湾全体の利益にとってマイナスになるとの判断が蔡英文政権に働いたようだ。

 何衛福部次長は、衛福部食品薬物管理署(TFDA)が過去7年間で9万件以上の日本食品を検査したものの、基準値以上の放射性物質が検出された例は1件もなく、微量の放射性物質が検出された場合は日本に送り返していると説明した。そして「台湾人は東京に旅行に行く際、食品輸入の規制エリアである千葉県の成田国際空港でも食事をする。それでも千葉県の食品輸入を規制できるだろうか」と述べ、規制緩和への理解を求めた。

依然強い安全性への懸念

 衛福部の方針に対し、消費者文教基金会(消基会)の游開雄董事長は「最大の問題は安全性への懸念で、政府は科学的データによって国民を安心させる必要がある」と発言した。主婦聯盟環境保護基金会(ホームメーカーズ・ユナイテッド・ファンデーション)の湯琳翔研究員は「政府は緩和に伴う補完措置を講じるべきで、中国が緩和しそうだからといって追随すべきではなく、自身の原則と手法を持つべきだ」と指摘した。

 野党国民党は、呂玉玲立法委員が「林全前行政院長は食品安全管理メカニズムが確立されない限り原発被災地食品の輸入問題はない、と約束していたがどうなったのか」と批判。曽銘宗立法委員も、安全性が確認さえる前にむやみに開放されるべきではないとの立場を示した。

 聯合報がウェブ上で行っているアンケートでは午後1時半現在、台湾政府が日本の被災地食品の安全性懸念は低いとの認識を持つことに疑問を感じる、との回答項目が全体の74%に当たる1,123件を集めており、市民の間では依然、被災地食品に対する不信感が根強いことがうかがえる。