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第2原発2号機再稼働へ、電力安定化に期待感


ニュース 公益 作成日:2018年2月6日_記事番号:T00075407

第2原発2号機再稼働へ、電力安定化に期待感

 台湾電力(台電、TPC)は5日、第2原子力発電所(新北市万里区)第2号機を再稼働すると発表した。脱原発政策の下、補修が終わった原子炉の再稼働を見送ってきた蔡英文政権が、厳しい寒さで電力需要が増加したことを機に方針を緩和した。年末の統一地方選挙を見据え、脱原発政策によって火力発電所の操業を拡大した結果、大気汚染が悪化したとの批判を抑える狙いがありそうだ。ただ、電力供給の安定化につながるため、産業界にとって歓迎できる決定だ。6日付自由時報などが報じた。

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 TPCは、5日に行政院の同意の下、行政院原子能委員会(原能会)に第2原発2号機の再稼働申請を行ったと説明した。早ければ3月5日に審査が完了する。再稼働により、電力供給が98.5万キロワット(kW)増え、運転予備率は3ポイント上昇して、電力の需給状況信号が「緑」(運転予備率10%以上、供給に余裕あり)に近づく見通しだ。

 5日は急激な寒さで暖房や除湿機の利用が増え、ピーク時の電力使用量が2,880万キロワット(kW)に上り、運転予備率6.17%で電力の需給状況信号は「黄」(運転予備率6~10%、需給ひっ迫)の下限近くまで低下した。

 TPCは、域内総生産(GDP)成長率が1ポイント上がれば、電力使用量は0.6%増えるので、行政院主計総処の経済成長率予測と産業界の電力使用状況を基に試算したところ、今年は脱原発の目標年である2025年までの間で最も電力供給がひっ迫すると説明。第2原発2号機を再稼働しなければ、4月上旬にも「黄」が灯り続けると指摘した。

25年脱原発目標に変更なし

 第2原発2号機は16年5月に検査中のトラブルで停止して以降、稼働させていなかった。第1原発(新北市石門区)1号機、2号機は停止したままで、台湾にある原発の原子炉6基のうち稼働しているのは半数のみだ。

 行政院の徐国勇報道官は、25年の脱原発目標に変更はなく、第1原発、第2原発、第3原発(屏東県恒春鎮)いずれも運転期限を迎えれば閉鎖すると述べ、政策を変更したわけではないことを強調した。

「現実的な判断」、産業界は評価

 中華民国全国工業総会(工総、CNFI)の蔡練生秘書長は、産業界は原発に賛成でも反対でもなく、電力の安定供給を望んでいるだけだと強調した。ただ、現在の電力供給では製造業を支えるのにギリギリな上、火力発電所が深刻な大気汚染の原因となっていると指摘。原発を再稼働させないことで、環境や市民の健康を害してよいのかと疑問を呈した。

 中華民国全国商業総会(商総)の頼正鎰理事長は、夏季も冬季も電力供給は非常にひっ迫しており、もし電力使用の制限が実施されれば、昨年8月15日の大規模停電と同様、百貨店や屋台など小売り、病院などが打撃を受けると懸念を示した。

 中華民国中小企業総会の林慧瑛理事長は、工場の生産ラインが電力不足で停止すれば、納期が遅れ、その後の受注も難しくなると説明。原発の再稼働は現実的な判断だと述べた。

 一方、環境保護団体、緑色消費者基金会の方倹秘書長は、老朽化した第2原発2号機の再稼働は人命を軽視しているとして、きょう6日にも頼清徳行政院長を公共危険罪で台北地検に訴える考えを示した。

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