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《18年花蓮地震》耐震住宅わずか27%、地震教訓に対応加速へ


ニュース 建設 作成日:2018年2月9日_記事番号:T00075486

《18年花蓮地震》耐震住宅わずか27%、地震教訓に対応加速へ

 台湾の住宅総数854万2,100軒のうち、2000年以降の耐震基準「建物耐震係数」を満たす「耐震住宅」は、築20年以下の232万3,400軒を中心に、全体の27.2%しかないことが分かった。今回の花蓮地震で死者が10人に上ったのは、断層上に建てられ、壁でなく主に柱で上層階を支えていた建築物が倒壊したためで、耐震性に問題があったとみられている。内政部は8日、老朽住宅の耐震強化を法的に義務付けることを検討すると表明した。9日付自由時報などが報じた。

/date/2018/02/09/00yunmen_2.jpg雲門翠堤ビルの倒壊は、1階部分が柱で支える騎楼(ピロティ)構造だったためとみられており、死者は7人と最多、いまだ7人が行方不明だ(9日=中央社)

 台湾の耐震基準は、1999年9月の中部大地震を機に、235.2ガル(Gal)へと引き上げられ、およそ震度5の地震に耐えられるようになった。従来は耐震性に明確な目安がなく、ほぼ震度4なら耐えられる設計だった。このため、00年以降に建築許可を取得した建物ならば、少なくとも震度5の地震に耐えられる。

 ただ、内政部の統計によると、築30年以上の住宅は400万軒近く、全体の46%以上に上る。うち6直轄市が270万軒だ。築40年以上の老朽住宅は179万1,500戸で全体の20.97%を占め、新北市が26万7,100軒、台北市が26万2,900軒を占める。

 公有の建築物に対する調査では、老朽化した危険な建物が3万4,000軒に上り、約40%が耐震基準を満たしていなかった。政府はこれまで耐震診断を全面実施したことはないが、この調査結果から類推すると、築40年以上の老朽住宅のうち72万軒、築30年以上では180万軒が危険な状態だ。

台北3.5万戸、倒壊リスク

 政府は、老朽住宅を建て替える都市再開発を推進しているものの、思うように進んでいない。

 柯文哲台北市長は、現在のペースでは、都市再開発完了までに1,000年かかるとして、政策の大幅な見直しを訴えた。李鴻源・元内政部長は、台北は液状化現象のリスクが高く、もしマグニチュード(M)7.3以上の地震が発生すれば、住宅3万5,000軒以上が倒壊すると指摘。防災を考慮した都市再開発の必要性を呼び掛けている。

 不動産開発公会の于俊明秘書長は、現行規定では住民の1%でも賛成しなければ、建て替えができないため、都市再開発が進まないと指摘した。さらに、政府の法規が不十分でリスクが高いので、デベロッパーが都市再開発に意欲的でないと現状の問題点を挙げた。

耐震診断を奨励

 内政部は、99年12月末以前に建築許可を取得した民間住宅に対し、耐震診断を奨励するため、費用6,000~8,000台湾元(約2万2,000~3万円)の全額を補助金として支給するなどの内容を盛り込んだ「安家固園計画」を推進している。内政部の邱昌獄次長は、強制ではないので、公有の建築物はほぼ100%の実施率だが、民間の実施率は低いままだと説明。今後、大型の建築物を中心に、営業許可を更新する際に耐震診断を求めていくとの方針を示した。

 このほか内政部は、建築法の改正で第三者機関の監視制度を追加する方針だ。既に行政院の承認を得ており、21日に関係官庁会議で審議し、立法院の次会期で審議する予定だ。

 第三者機関の監視制度導入は、16年2月の南部地震で台南市の維冠金龍ビルが倒壊し、115人の犠牲者が出た際に、一定規模以上の建築物の建設は政府か専門家が審査すべきとの声が高まったことがきっかけだ。これまで一部の建築家が反対したため、進んでいなかった。