馬英九時代がいよいよ始まった。経済情報誌「遠見」は今月5月号の「新政府よ、台湾に新局面を下さい」という特別リポートで、馬英九総統や中台関係に関する市民へのアンケート調査や、李登輝元総統と丁渝洲元国家安全会議秘書長による新政権への提言を報じている。ワイズニュースでは今回の馬総統就任に合わせこのリポートを伝える。
リポートのトップを飾るアンケートは、馬英九総統への期待の高さを示すものとなった。激しい与野党対立や、政府・与党幹部の相次ぐ汚職発覚で閉塞感が強かった陳水扁時代に幕が引かれ、クリーンかつ温和なイメージの馬総統の登場で、社会の方向軸が安定と発展へと回帰するという待望感が反映したといえる。
満足度、60%に
遠見のアンケートは、就任1カ月前の4月15~18日に電話で行われ、20歳以上の男女1,003人から回答を得た。当選後の馬氏は政界や経済界の重要人物のところに足を運んで提言を求めたり、中台関係や経済政策、新政権の人事などについてさまざまな発言を行っていた。こうした馬氏の言動に関する満足度を聞いたところ、「満足」と「どちらかというと満足」を合わせた数値は60.5%で、「不満」「どちらかというと不満」の17.5%、「分からない・無回答」の22%を大きく引き離した。
支持政党別でみると、国民党支持層(泛藍)は「満足」が86.5%と圧倒的な割合になった一方、民進党支持層でも3分の1以上に当たる36.2%が「満足」と回答しており、民進党支持層でも馬氏に肯定的な傾向が現れていることが分かる。
この傾向は地域別でも同様で、民進党の支持者が多い「雲林県、嘉義県市、台南県市」でも、満足度は全土で最も低いものの50.9%と過半数を超えた。
中国人観光客歓迎、不動産投資は疑問視
馬総統の公約である中台間の経済交流拡大に関する項目では、「中国人観光客の来台開放」には、76.8%が「賛成」と回答した。また、▽週末直航チャーター便運航、69.2%▽貨物チャーター便運航、66.3%▽台湾元と人民元の両替、61%──の賛成でいずれも期待の声が高い。
一方、「中国人による台湾不動産購入」については、「賛成」37%「反対」63%で否定的な反応が多い。中国資本の流入による地価上昇に対する懸念が背景にあるとみられる。
「統一に賛成」、過去最低に
統一・独立問題について最も多かった回答は、「当面は現状を維持し、その後は状況を見る」の44.8%で、過去5年で最高の数値となった。「中国との統一に賛成」は過去5年で最低の8.4%、「台湾の独立に賛成」は21.8%といずれも低い数値だった。馬氏は総統選では58.45%の高得票率を記録した一方で、統一を支持する層が減っていることは興味深い現象で、馬氏に投票した有権者の期待は「中台統一」ではなく、「安定した中台関係」であることがうかがえる。
中台トップ会談、68%が期待
馬氏は先月、自身の任期中の訪中や中国の指導者との会談を行うことはないと表明している。しかし調査では、「馬総統が任期中に胡錦濤中国主席と中台関係について会談することを望む」という回答が68.3%に上り、「望まない」の15.6%を大きく引き離した。2005年の調査では、「望む」が71.4%、「望まない」は14.5%だった。こうした数値から、民進党と国民党、どちらの政権であれ、台湾住民は中台のトップ会談を望んでいると遠見は指摘している。