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記事番号:T00075718
2018年3月1日15:24

 中国・国務院台湾事務弁公室(国台弁)は28日、31項目から成る台湾の企業と勤労者に対する新たな優遇措置を発表した。中国企業・勤労者と同等の待遇を与えることが主眼で過去最大の規模となった。これにより台湾企業の中国投資、台湾人の中国就業がさらに進むとみられ、台湾の弱体化と中国の統一攻勢に対する抵抗力の低下といったマイナス面への懸念の声が出ている。1日付聯合報などが報じた。

/date/2018/03/01/00top_2.jpg国台弁の安峰山報道官は、「国家の重点計画や重点研究開発計画を含め、力強さと範囲の広さにおいて前例のない開放だ」と自賛した(28日=中央社)

 国台弁が発表した「両岸経済文化交流合作の促進に関する若干の措置について」の31項目は、台湾企業向けが12項目、勤労者向け19項目から成る。台湾企業向けは▽「中国製造2025(メード・イン・チャイナ2025)」アクションプランへの参画▽税制優遇。条件に適合した台湾企業に対し、国家が重点的に支援する必要のあるハイテク企業に準じて15%の軽減税率を適用、中国に設置した研究開発(R&D)センターによる設備の国内調達に対し増値税を全額返還▽台湾の科学技術研究機関、学校、企業が中国で独立法人の登録を行い、国家の重点R&D計画に参入を可能にする▽エネルギー、交通、水利、環境保護、市政公共工事などインフラ建設への特別認可による参画と、中国政府による調達への参画、国有企業が民間資本を受け入れて経営を刷新する混合所有制改革への参画▽台湾金融機関と中国銀聯(ユニオンペイ)および中国の非銀行系第三者決済サービス業者との提携、中台のモバイル決済サービス業者の提携、台湾資本の銀行による中国同業の協調融資(シンジケートローン)参画──など。

 台湾の個人向けは、▽専門技術者に対する53項目、技能職者に対する81項目の職業資格試験開放▽海外からの優秀な人材誘致を目指す「千人計画」、香港・マカオと中国本土の学生交流を促進する「万人計画」への専門人材の参画▽中国のテレビ番組、映画製作への参画▽中国での医師資格試験の規定緩和、条件に適合した台湾人医師への中国の医師資格認定▽証券、先物、ファンド業務への従事資格を、中国の法律法規試験合格で認定に緩和▽台湾の教師に対し中国の高校での教職就任を促進、台湾で取得した学術成果の評価システムへの組み入れ──など。

台商は高く評価

 中国に進出する台湾企業(台商)の団体、全国台湾同胞投資企業聯誼会(台企聯)の王屏生会長は31項目の措置について、「税制優遇や金融面での協力深化などに最も恩恵を感じる。台商の大陸投資を保護する政策の延長であり、今後大陸市場はまさに台商の市場となる」と歓迎意向を示した。また、上海市台湾同胞投資企業協会の李政宏会長は、混合所有制改革によって台湾企業による中国国有企業への出資が認められるようになること、およびエネルギー、交通などのインフラ建設への参画を最大のメリットとして挙げた。

「台湾空洞化」も狙い

 聯合報は中国の措置の台湾への影響について「大きなものとなる」と論評。台湾の一般市民を中国社会に溶け込ませ、経済と社会の実力によって統一への動きを加速する狙いがあると指摘した。与党・民進党寄りのシンクタンク、台湾世代智庫の董立文諮問委員は、「台湾の人材を吸収して、台湾経済を発展させる原動力を奪い取る狙いだ」との見方を示した。行政院大陸委員会(陸委会)は、「中国経済の発展目標のために台湾のリソースを吸収するとともに、利益によって台湾の政治的アイデンティティーを得る狙いがある」として、台湾アイデンティティーを空洞化させる意図があるとの見方を示した。企業、人材の中国傾斜がさらに進むことで、台湾経済がより劣勢となり、中国による統一攻勢への防御力が弱体化することへの危機感を表したものだ。

産業団体、「投資環境改善を」

 台湾の産業団体からは、中華民国工商協進会(CNAIC)の林伯豊理事長が「中国の措置は両岸(中台)企業のウインウインにとって有利だ。しかし、台湾は企業を敵視した労働検査や実際にそぐわない新南向政策など経営環境が日増しに悪化している」と政府を批判。中華民国全国商業総会(商総)の頼正鎰理事長も「台商がUターン投資をしたくても、台湾には税金面での優遇、土地、人材が不足しており誘引に欠ける」と述べ、投資環境改善を政府に促した。

 なお、中国の新措置については、地方政府がどの程度執行を徹底するのか、実際の台湾企業の恩恵はどの程度のものになるのかを観察する必要があるとの指摘も出ている。

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