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米国が鉄鋼輸入制限へ、台湾に余波60億元


ニュース 鉄鋼・金属 作成日:2018年3月5日_記事番号:T00075771

米国が鉄鋼輸入制限へ、台湾に余波60億元

 トランプ米大統領が1日、輸入する鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の追加関税を課す方針を表明したことを受け、米国の鉄鋼輸入シェア4%で世界8位の台湾への打撃が懸念されている。台湾が昨年、米国に輸出した鋼材は110万トンで8億米ドルだったため、追加関税により60億台湾元(約220億円)の利益が失われる計算だ。5日付工商時報などが報じた。

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 台湾が昨年米国に輸出した鋼材110万トンのうち、過半の57万トンがアルミめっき鋼板で主な輸出企業は裕鉄企業、燁輝企業、盛餘(SYSCO、センユースチール)。次いで鋼管が22万トンで中鴻鋼鉄、鑫陽鋼鉄(SY)、天声工業など、冷延は11万トンで中鴻鋼鉄、統一実業などが輸出した。

 中国鋼鉄(CSC)、燁輝企業、裕鉄企業、SYSCOなど輸出メーカーは2日、緊急対策会議を開催した。CSCは、米商務省は今週中に詳細を発表する見通しで、もし即日発動されれば、3月分の受注は既に固まっており、一部貨物は既に海上輸送中なので、追加関税25%を免れられないと指摘。もし発動が3カ月後になれば、それまでに米国の顧客からの受注が相次ぐほか、在庫が一掃されると予想した。ある鉄鋼メーカー幹部は、一時的に市場から退いて様子を見る可能性もあると話した。鉄鋼メーカーの生産縮小で、鉄鋼市況が一転して悪化する恐れもあるとみている。

 翁朝棟CSC董事長は、台湾メーカーの意見を業界団体でまとめて、経済部国際貿易局(国貿局)から世界貿易機関(WTO)に仲裁手続きを申し立てると述べた。国貿局は、台湾にとって米国は2位の貿易相手国で、米国の輸入制限で影響が出るため、WTO加盟国として台湾の利益を守ると表明した。米国は台湾にとって、昨年の鉄鋼輸出シェア12.3%で、中国のシェア13%に続く重要市場だ。

38%リスク回避に成功

 中華経済研究院(中経院、CIER)経済法制研究センターの顔慧欣副主任は、米国はオバマ前政権下で中国製の鉄鋼に対し貿易救済措置を発動し、中国からの鉄鋼輸入シェアは2%未満まで下がっているため、中国製鉄鋼が米国の安全保障上の脅威になっていることを輸入制限の理由にするのは無理があると指摘した。さらに、米国の輸入制限で中国が受ける打撃は小さく、中国以外の国・地域が巻き添えを食うだけとして、措置は不合理との見方を示した。

 米国の鉄鋼輸入シェアは▽カナダ、16%▽ブラジル、13%▽韓国、10%▽メキシコ、9%▽ロシア、9%▽トルコ、7%▽日本、5%▽台湾、4%▽ドイツ、3%▽インド、2%──。中国は11位まで低下している。

 一方、専門家は、台湾から米国への2016年の鋼材の輸出は176万トンだったが、昨年は110万トンへと減少しており、トランプ大統領の就任後、台湾メーカーは38%のリスクヘッジに成功していることも指摘した。

【図】