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米国の対中制裁、台湾電子メーカー直撃


ニュース その他分野 作成日:2018年3月23日_記事番号:T00076155

米国の対中制裁、台湾電子メーカー直撃

 トランプ米大統領が22日、中国からの輸入製品に高額の関税を課す制裁措置の大統領覚書に署名した。これにより台湾は、中国に輸出している部品や半製品、中国で組み立てて米国に輸出しているICT(情報通信技術)などの最終製品への打撃が予想される。中央銀行(中銀)は、米中貿易戦争に発展すれば、台湾のGDP(域内総生産)は1.8%、約3,140億台湾元(約1兆1,300億円)押し下げられるとの試算を示した。23日付工商時報などが報じた。

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 米国は、中国による知的財産権侵害などを理由に、通商法301条に基づき、約1,300品目、500億米ドル相当に関税を課す。対象品目リストは後日発表する。

 経済部の統計によると、台湾の2017年の輸出額は3,172億5,000万米ドルで、このうち中国に輸出した中間財が763億6,000万米ドルと24.1%を占めた。香港を合わせると1,133億2,000万米ドルで、中間財は35.7%に上る。ただ、このうちどれだけを中国で加工し、米国に輸出しているかのデータはない。

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 経済部は、全ての中間財が米国の課税対象になるとは限らないが、台湾に必ず影響はあると指摘した。経済部国際貿易局(国貿局)は、化学品やプラスチック・ゴム製品、金属製品への影響が大きいと説明した。

 財政部の統計によると、対中輸出の内訳は電機設備や部品が55.4%を占め、次いで光学器材などの精密機器(液晶パネルを含む)が8.8%、機械用具や部品が8.4%だった。

 中銀の楊金龍総裁は、昨年の貿易総額の対GDP比は145%で、グローバルバリューチェーン(GVC)参加率は67.6%に上ると指摘。付加価値ベースの対米輸出の対GDP比は韓国や中国よりも高く、米国が高い貿易障壁を築けば台湾の輸出に直撃すると懸念を示した。

受託メーカー、動向を注視

 米国の対中制裁について、電子製品の受託生産大手、鴻海精密工業、広達電脳(クアンタ・コンピューター)、仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)、和碩聯合科技(ペガトロン)などはコメントを控えた。

 ノートパソコンブランド大手、華碩電脳(ASUS)と宏碁(エイサー)は、動向を注視している。スマートフォン大手、宏達国際電子(HTC)は、影響ないとコメントした。証券会社によると、HTCは主に台湾で生産しているためだ。

 一方、電気自動車(EV)大手、米テスラにワイヤハーネスを供給する貿聯控股(ビズリンクホールディングス)は、米国に工場を設けているので打撃はなく、将来は受注が増える可能性があるとコメントした。

貿易戦争は「長くて半年」

 中華民国全国商業総会(商総)の頼正鎰理事長は、中国に半製品を輸出したり、中国で組み立てて米国に輸出している台湾メーカーは多いので、必ず打撃を受けると説明した。製品の競争力を向上させたり、市場を分散してリスクを下げるなど対策を講じるべきと述べた。

 中華民国全国工業総会(工総、CNFI)の許勝雄理事長は、もし通貨戦争に発展すれば、世界経済が深刻な影響を受けると懸念を示した。

 中華経済研究院(中経院、CIER)の李淳WTOセンター副執行長は、米国の制裁措置に中国は必ず反発し、米中貿易戦争に発展すると予測。ただ、中国にとって米国が必要なように米国にとっても中国は必要なため、貿易戦争は続いても半年との見方を示した。

【図】