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ダム建設で移住した村、今も船で墓参り


ニュース 社会 作成日:2018年4月9日_記事番号:T00076384

ダム建設で移住した村、今も船で墓参り

 4月5日の清明節は、人々が墓参りに出掛け、先祖の霊を慰める日として知られる。台湾では一般的に山の中腹に墓地が設けられ、清明節になると車に乗って墓参りへ向かう市民が多いが、新北市では毎年、翡翠ダム(石碇区)の水源エリアにある墓地へ船に乗って赴く人々が存在する。

 翡翠ダムが1987年に完成した際、ダムの底に沈んだ碧山村、および周辺の山間部にあった永安村、格頭村は水源エリアの保護を目的として立ち入り禁止地域に指定され、約400世帯の住民が移住を余儀なくされた。しかし代々、先祖を祭ってきた墓地はそのまま残されたため、元住民たちは移住後30年が過ぎた今も、清明節になるとダム管理局が用意したボートに乗って湖水を渡り、墓参りを行っている。

 碧山村の元住民、林天元さん(67)も、水源エリアにある曽祖母の墓へ毎年のように参っている。「小さいころから山に登っているので慣れている」と話す林さんだが、墓地のある水源エリアは立ち入りが禁止されていることから、草木が茂り放題の「原始林」状態となっており、毎年鎌を手に道なき道を切り開いて行かねばならない。

 今年の清明節、午前9時にボートに乗り込んで翡翠ダムを渡った林さんは着岸後、1時間近くをかけて山中にある土地公(土地を守る神様)を祭る廟(びょう)に到着。ここに参拝した後、さらに山の奥へ歩を進め、ようやく墓地を探し出して墓参りをすることができた。

 かつてダムができたばかりのころは墓参りをする者も多く、20人乗りのボートに80人が詰め込まれるような混雑ぶりだったが、元住民たちの高齢化に伴い、その数は年々減少している。大切にされてきた山中の墓地の記憶が失われてしまわないよう、早いうちに記録を残しておいた方がよいかもしれない。