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米国が中国通信機器大手に圧力強化、台湾業界は影響注視


ニュース 電子 作成日:2018年4月19日_記事番号:T00076567

米国が中国通信機器大手に圧力強化、台湾業界は影響注視

 米連邦通信委員会(FCC)は17日、米国の通信事業者に対し、中国製の通信機器の購入に際し、FCCの補助金(年間85億米ドル規模)の利用を禁止する決定を行った。華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)と中興通訊(ZTE)を念頭に、第5世代移動通信規格(5G)で主導権掌握を目指す中国への打撃を狙った措置とみられる。米中貿易摩擦で米国は最近、中国通信機器業界への圧力を強めており、台湾業界は影響を注視している。

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 アジット・パイFCC委員長は「米国政府は何年も前から、特定の外国の通信機器が安全保障上の懸念になり得ると表明してきた」と述べ、ルーターなどの通信機器を通じウイルスやマルウェアなどによって米国人や企業の情報が盗み取られる恐れがあるとして、中国通信機器メーカーの危険性を指摘した。

 米国による中国通信大手締め出しの台湾電子業界への影響について業界関係者は、規制対象が通信設備にとどまる場合は、ファーウェイの受託生産メーカーである鴻海精密工業への打撃が最も大きく、スマートフォンにまで広がる場合は、台湾積体電路製造(TSMC)、聯発科技(メディアテック)、日月光半導体製造(ASE)、京元電子(KYEC)など半導体大手が影響を受けると指摘した。

メディアテックに転注観測

 米商務省はこれに先立つ16日、ZTEが今後7年にわたり米国企業から部品・技術の提供を受けられなくなる措置を決定している。

/date/2018/04/19/00ic_2.jpg江蘇省南通の半導体メーカー。中国製通信機器の核心技術を支える半導体は依然米国企業が供給しており、中国企業では対応できない。米国の措置に中国業界は大きな衝撃を受けている(17日=中央社)

 ZTEはスマートフォンで使用するチップセットの65%をクアルコムから、35%をメディアテックから調達している。クアルコム製品が使用できなくなり、メディアテックからの調達が拡大するとの期待感から、18日の台湾株式市場ではメディアテック株がストップ高近くまで上昇した。

 ZTEは通信設備でもインテルやザイリンクス、テキサス・インスツルメンツ(TI)など米国半導体企業のチップを使用している。米商務省の禁止措置によって当面は甚大な影響が見込まれるが、ZTEは他国製のチップで代替していくとみられる。

 また、5G基地局用チップは現時点で米国が技術面でリードしているものの、ZTEは今後、ファーウェイ傘下の深圳市海思半導体(ハイシリコン・テクノロジーズ)や欧州IDM(垂直統合型の半導体メーカー)からの調達や、創意電子(グローバル・ユニチップ、GUC)、智原科技(ファラデー・テクノロジー)といった台湾IC設計会社と提携してASIC(特定用途向けIC)を開発するといった方策を採るとみられる。

 なお、ZTEスマホは今後グーグルのアンドロイドOS(基本ソフト)も利用できなくなる。スマホ事業の大幅縮小を余儀なくされる可能性があり、その場合、ZTEのスマホシェアは他ブランドに取って代わられ、メディアテックはスマホでは転注効果を得られない可能性もある。

MOSFET​、受注増へ

 なお、ZTE向けの通信機器部品では、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)が台湾メーカーへの転注が期待できる。

 MOSFETは供給が逼迫(ひっぱく)しており、今年は欧米IDMによる納期が20~30週まで延びていた。米国による供給禁止措置によって、大中積体電路(シノパワー・セミコンダクター)、杰力科技(エクセライアンスMOS)、尼克森微電子(ニコ・セミコンダクター)といった台湾メーカーへの発注が想定される。

【表】