ニュース 電子 作成日:2018年6月5日_記事番号:T00077419
台湾積体電路製造(TSMC)の張忠謀(モリス・チャン)董事長(86)が5日、正式に引退した。TSMCを1987年の創業時よりリードし、ファウンドリーという新たなビジネスモデルで世界の半導体業界を変え、台湾を世界の半導体の重要拠点に押し上げた。張氏引退によって、台湾半導体業界は一つの時代の終わりを迎えたといえる。偉大な創業経営者が去ったTSMCが、劉徳音新董事長、魏哲家新総裁の2人の下で、引き続き張氏と同様の成功を収めていけるのか注目される。中央社電などが5日報じた。
株主の拍手に両手を挙げて応える張董事長。戦後の台湾産業界で最も偉大な経営者の1人だった(5日=中央社)
張氏は5日午前、董事長として最後の株主総会に出席した。会場に入場した際は株主たちから大きな拍手で迎えられた。
張氏は「TSMCは業績でも世界における役割でも、31年間で奇跡的な成長を遂げ、これを見ることができてうれしかった」とあいさつ。「株主総会後に正式に引退するが、董事会が引き続き、誠実、正直、約束、イノベーションと顧客の信頼獲得というTSMCの伝統的価値を守れると確信している」と続け、「TSMCの奇跡は決して終わらない。もう一度奇跡を起こせる」と述べて締めくくった。
張氏は董事として董事会に残ることはせず、顧問にも名誉董事長にも就かず、TSMCから完全に離れる。今後は自伝を執筆する他、家族との旅行などを楽しむリタイア生活を送るという。
業界の圧倒的首位に
張氏は業界で初めて導入したファウンドリーモデルと独自開発能力によってTSMCを躍進させた。経営が安定期を迎えると、売上高、収益、生産能力、出荷量、製造プロセスの先進性、納税額、従業員数でファウンドリー業界の圧倒的首位に君臨。台湾の半導体業界の世界的地位を固める上で大きく貢献した。昨年の売上高は1兆台湾元(約3兆7,000億円)に迫り、台湾の域内総生産(GDP)の4%、輸出の6.8%を占め、雇用機会を4万7,000人に提供している。
TSMCは世界の株価時価総額100位以内に入る唯一の台湾企業で、時価総額は一時6兆7,000億元にも達した。
現在最も注目を集める人工知能(AI)分野では、さまざまな技術的困難を克服し、ニューラルネットワークによる高速演算処理技術を誕生させた。張董事長は「TSMCを通じ、毎年半導体業界で多くの革新が成し遂げられている。その多くはファブレス企業が発明したものだ。TSMCがなければ、多くのファブレス企業は存在し得ず、これほどの革新もなかった」と語っている。
ツートップ体制で経営
TSMCは今後、劉新董事長、魏新総裁のツートップに経営が委ねられる。
劉氏は冷静沈着な性格で、魏氏とは相互補完的関係になるというのが社外の評判だ。張氏は2人について「1+1=2以上の役割を発揮する」と発言している。ただ、ツートップ体制は当面すり合わせの時期が必要とみられている。
当面の難題としてはまず、サムスン電子やインテルとの競争が挙げられる。中国で中芯国際集成電路製造(SMIC)などの技術が進歩していることも懸念材料だ。
このほか、製造プロセスの微細化では張董事長が「ムーアの法則」が2025年には限界を迎えると予測するように、技術面での突破が不可欠だ。一方、通信用半導体に関しては、第5世代(5G)規格の時代を迎え、モノのインターネット(IoT)、コネクテッドカー、スマートホームなどの商機がTSMCの業績に貢献すると期待される。
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