ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

「2ナノ25年までに」、張忠謀前TSMC董事長


ニュース 電子 作成日:2018年6月15日_記事番号:T00077625

「2ナノ25年までに」、張忠謀前TSMC董事長

 台湾積体電路製造(TSMC)董事長を引退した張忠謀(モリス・チャン)氏は14日、欧洲在台商務協会(欧洲商会、ECCT)で講演し、3ナノメートル製造プロセスは2年以内に開発に成功し、2ナノプロセスも2025年以前に生産できるとの見通しを示した。2ナノプロセス生産で具体的な時間的見通しが示されたのは今回が初めてだ。15日付経済日報などが報じた。

/date/2018/06/15/00top_2.jpg欧洲商会に招かれた張董事長(中)。半導体の展望を語った際には「妻は私と一緒にいても、9割の時間はスマートフォンで誰かと話しているかメールを見ている」と、冗談まじりに応用機器の発展ぶりに触れた(14日=中央社)

 張氏は「ムーアの法則(半導体の集積密度は18~24カ月で倍増する)の限界に挑戦することになる」と前置きしながらも、「2ナノは3ナノ生産後、4年以内に研究開発(R&D)を終える」との見方を語った。

 この日も、中国の半導体業界は台湾に追い付けるかとの質問が出て、張氏は「中国業界は今後10年で急速に発展するだろうが、TSMCも成長するため差は縮まらず、技術は5~7年のリードを保つ」との見解を改めて表明した。

 張氏は、中国半導体業界は依然、100億米ドル規模の非常に大規模な政策的補助に依存しているが、経営に政策が介入するモデルよりも、自由市場の方がはるかに好ましいと指摘した。一方で、開発途上国の場合は産業政策による支援が必要と一定の理解も示した。

 半導体の将来の展望については、パンや米、鉄鋼やセメントと同様に市民生活に深く入り込み、しかも成長速度はそれらの産業よりも速いと発展への確信を語った。今後10年、世界経済の成長率を約3%としても、半導体業界の成長率はそれを上回る5%が見込め、TSMCには5%以上の成長率を期待していると話した。

イノベーションを奨励

 台湾の経済環境がイノベーションにとって好ましいかとの質問に対しては「ノー」と答え、台湾の文化、習慣、執行力はいずれもイノベーションにとって友好的ではないと述べた。それでも、自身が1980年代に米国から台湾に戻った際に比べれば、環境は大きく改善されており今後はさらに良くなると見通しを示した。

 ちなみにTSMCは従業員によるイノベーションへの取り組みを強く奨励しており、「提案が上司に却下されてもさらに上層部に再提案でき、最高で私のところまで『上訴』できた」という会社の仕組みを紹介した。ある従業員のイノベーションプランが、数百万米ドルを投じたものの何の成果も挙げずに終わった逸話も披露して、「これがイノベーションだ。失敗しても処罰を与えてはならない」と力説した。

 自身にとって最大のイノベーションはいつだったかという質問には「50歳のある日、年を取ったと感じ、運動をしなければ老いるのがさらに早くなると感じてジョギングを始めたことだ」とやや意外な答えを返した。その上で、「最も利益を上げたイノベーションといえば、TSMCでファウンドリーモデルを確立したことに他ならない」と付け加えた。