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北部3市の台風休み、判断異なり大混乱


ニュース 社会 作成日:2018年7月12日_記事番号:T00078088

北部3市の台風休み、判断異なり大混乱

 台風8号(アジア名・マリア)への対応で11日、台北市や新北市など北部3市が台風休みの判断を異にした結果、企業の現場で混乱が広がった。実際の風雨よりも市をまたいでの就業、通勤への悪影響が大きく、いわば人災がもたらされたと12日付自由時報は指摘。圏域人口700万人を超える北部3市に対し、台風シーズンの課題を残した。

/date/2018/07/12/00top_2.jpg台北市中心部の11日の天候は、通勤時間帯の出勤に大きな問題が出るほどではなかった(11日=中央社)

 台湾では、台風襲来時で風雨が一定規模に達することが予想される場合、人命などの被害を避けるべく、県市が公共機関と学校に対し台風休みの「停班停課」を発表する。民間企業は従う義務はないが、実際には非常に多くの企業が「停班停課」に従って休業する。

 台北市、新北市、基隆市の北部3市は共同生活圏を形成しているとの認識の下、2012年以降、台風休みで共同歩調を取ってきた。しかし今回は、新北市のみが台風休みとし、台北市と基隆市は通常出勤を決めたため、企業の現場で混乱が広がった。蘋果日報によると、新北市に住み、台北市に通勤している人は約80万人だ。

 台北市内湖区のインターネット企業では、新北市居住者は休み、基隆市在住者は交通の混乱で出勤できず、普段40人の従業員のうち結局出勤したのは10人に満たず、4人分の仕事を1人でこなすことになった。

 台北市で朝食店を経営する女性によると、新北市にある食品工場が休みとなったため商品の供給が遅れ、午前5時半の営業開始時間を午前9時に変更せざるを得なかった。

 政府機関でも、文化部は新北市新荘区にあるため休みだが、文化部影視流行音楽産業局は台北市にあるため通常出勤といった、ちぐはぐな状況がみられた。

 労働部によると、台風休みを取ってよいケースは▽居住地が停班停課▽就労地が停班停課▽出退勤の際に停班停課の県市を通過する──の3パターン。台風休みとならなかった基隆市に在住、台北市の職場に通う勤労者は、通勤途中で必ず新北市を通過するため出勤する必要はない。

停班停課基準、沿海部9区のみ

 11日新北市で、停班停課を決める基準となる風速7級(毎秒13.9~17.1メートル)、最大瞬間風速10級(毎秒24.5~28.4メートル)を観測したのは沿海部の9区のみで、台北市、新北市、基隆市の3市全体の20%に当たる。産業の少ない郊外の停班停課判断が新北市全体に適用された結果、3市の勤労者を混乱に陥れたのが今回の騒動の実態だ。

 これについて11日に外遊先のシンガポールから台湾に戻った朱立倫新北市長(国民党)は「万が一、台風が南側のコースを取っていれば災害が起きていた。私は市民の安全こそを最重要と考えており、停班停課の判断には完全に責任を負う」と表明した。なお、民進党籍の林右昌基隆市長は「朱市長は台風の際に海外にいたことを批判されるのを懸念して、新北市全体を休みにすることを決めたのではないか」との推測を語った。

柯市長を評価、54%

 一方、台北在住者を対象にした蘋果日報のアンケートによると、台風休みを見送った柯文哲台北市長の判断には、54%が賛意を表明。批判的な意見は39%にとどまった。

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 仮に新竹科学工業園区(竹科)の全企業が操業を1日休んだ場合、損失額は40億元に上るとの試算もあり、安易に台風休みにした場合、経済には確実に悪影響が出る。頼正鎰・中華民国全国商業総会(商総)理事長は「柯市長は骨のある決定をした。一方、市民の機嫌を取る新北市の決定は、企業経営を困難に陥れるものだ」と論評した。

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