先日受託生産価格の値上げ検討を表明した台湾積体電路製造(TSMC)に追随して、値上げをしようという動きが下流の封止・検査も含め半導体業界に広がっている。ファウンドリー価格上昇の影響を最も受けるIC設計業界では、企業によっては生産・マーケティング戦略の見直しを迫られる可能性もある。30日付工商時報などが報じた。
聯華電子(UMC)の鍾立朝グローバルマーケティング副総経理は29日、「インフレと石油製品価格の上昇を受けて、受託生産価格を調整する可能性がある」と明らかにした。TSMCは27日に0.13マイクロメートル以下の製造プロセスで値上げを検討するとしたが、UMCでは全製造プロセスで検討すると語った。ただ値上げを行う場合、各製造プロセス製品の需給動向を見て決定する方針だ。
30日付経済日報によると、UMCと同時に世界先進積体電路(VIS)や中国のファウンドリー最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)も値上げ検討を表明しており、同紙は「ファウンドリー業界の値上げの動きが固まった」と報じている。
一方、工商時報は、第2四半期の生産能力利用率が100%に達した可能性が高いTSMCに比べ、85%程度のUMCや中芯の場合、顧客に値上げを認めさせることは容易でないとした上で、「値上げ検討の表明によって、少なくとも現在の受託生産価格を維持できる効果がある」と指摘した。
UMCは「受託価格が下がりさえしなければ、65ナノメートルプロセスの比率向上に伴って全体の平均販売価格(ASP)が上昇し、利益が拡大する可能性がある」という見方だ。
日月光も値上げ意向
ファウンドリーの動きに応じて、封止・検査の日月光半導体(ASE)も受注価格の引き上げ意向を表明した。同社によると昨年以来銅や金など金属価格が上昇を続けており、コスト圧力が強まっている。価格引き上げが実現しても、「値上げというよりは『コストを適時かつ合理的に反映した』というのがふさわしい」と説明している。
なお、封止・検査業界では、既に矽品精密工業(SPIL)と頎邦科技(チップボンド・テクノロジー)が4月に受注価格引き上げを行っている。頎邦では第3四半期にも2度目の値上げを行う可能性があるとしている。
UMC値上げなら打撃
ファウンドリー価格の値上げが実現した場合、最も影響を受けるのはIC設計業者だ。
経済日報によると、TSMCが値上げを実施しても、聯発科技(メディアテック)や立錡科技(リッチテック・テクノロジー)、聯詠科技(ノバテック)など台湾を代表するIC設計メーカーであっても、0.13マイクロメートルプロセス以下の製品は一定の割合以下のため影響はそれほど大きくない。しかし、UMCが全製造プロセスの値上げを実施した場合、相応の打撃を受けるとみられる。
IC設計業者の中には製造プロセスの引き上げによってチップ1個当たりの製造コストを引き下げ、それによってファウンドリー側のASP」の引き下げを試みようというメーカーもあるという。