ニュース 政治 作成日:2018年7月25日_記事番号:T00078317
日本や中国などで構成する東アジアオリンピック委員会は24日、来年台中市で開催が予定されていた第1回「東アジアユースゲームズ」について、台湾では2020年の東京五輪に「台湾」の名称で参加することの是非を問う住民投票運動が推進されており、政治的リスクがあるとして多数決で中止を決めた。中国の圧力によるもので、台湾では官民問わず強い反発の声が上がっている。25日付聯合報などが報じた。
林佳龍台中市長は東アジア五輪委の決定に「政治によるスポーツへの干渉は、五輪精神をひどく損なうものだ」と批判した(24日=中央社)
北京で行われた東アジア五輪委の理事会では、中国の劉鵬・同理事会主席が「五輪モデルは守られるべき」と台湾の住民投票運動を指弾しつつユースゲームズの開催中止を提案。多数決が行われ、台湾が反対、日本が棄権したものの、残りの中国、韓国、北朝鮮、香港、マカオ、モンゴルは全て賛成し、中止が決まった。ちなみに「五輪モデル」とは、台湾が「チャイニーズタイペイ(中華台北)」の名称で参加する、1984年のロサンゼルス五輪以降の取り決めを指す。
既に6.7億元投入
大会の中止決定に対し蔡英文総統はフェイスブックを通じて抗議を表明した。「中国が政治力を行使し、横暴にもユースゲームズをボイコットしたことは、台湾人民は支持政党を問わず受け入れられない。開催の再申請を最後まで行っていく」とした。ただし、再申請が認められる可能性はゼロに等しい。
大会は来年8月24日から31日までの期間に14の競技を実施し、14歳から18歳までの選手2,000人の参加が予定されていた。台中市は既に6億7,000万台湾元(約24億3,000万円)の経費を投入している。林佳龍台中市長は「中国は台湾人と若い選手たちをひどく傷つけた」と批判した。
総統府国策顧問で住民投票の台湾での呼び掛け人である、メキシコ五輪銅メダリストの紀政(74)氏は「非常につらく、受け入れられない。政治の黒い手がスポーツ競技に伸ばされるべきではない」と非難した。台湾の名称による東京五輪参加運動は、最初日本で始まり、その後台湾に広がった経緯がある。台湾では現在、住民投票の実現に向けて署名活動が行われている。
林市長の判断ミスか
政治評論家の鄭照新氏は、中国が大会中止へと圧力を掛けた理由を、林市長が紀氏を47人いる大会準備委員会で序列1位の名誉総顧問にしたためと指摘した。
東アジアユース大会は国際オリンピック委員会(IOC)傘下の正式な競技会で、台湾でこうした大会が開かれるのは初めてとなるはずだった。しかし、「台湾の名称での東京五輪参加」は「一つの中国」への挑戦であり、これを推進する紀氏を名誉総顧問に据える大会の開催を許容しては、中国にとって運動を黙認する意味を持つ。中国の横暴な圧力を批判するのは当然だが、仮に鄭氏の指摘が正しければ、大会を中止に導いたのは林市長の政治的判断の甘さだったということになる。
正名運動の限界指摘
大会中止について中華オリンピック委員会は、同会が国際大会の主催を申請することが今後さらに困難になったとして、台湾のスポーツ外交、国際社会での存在感にも影響が出ることを指摘した。
今回の事態に対し聯合報は、「五輪モデル」が中国にとっての限界ラインであり、「台湾正名(台湾という正しい名称に直す)」はその限界ラインを越えられず、大会開催を失った結果、「世界に台湾を見せる」という正名運動のスローガンは言葉だけに終わったと批判した。
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