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デルタ、米国で受動部品チリシンに特許訴訟


ニュース 電子 作成日:2018年8月3日_記事番号:T00078495

デルタ、米国で受動部品チリシンに特許訴訟

 台達電子工業(デルタ・エレクトロニクス)完全子会社の受動部品大手、乾坤科技(Cyntec)が今年2月、受動部品最大手、国巨(ヤゲオ)傘下の奇力新電子(チリシン・エレクトロニクス)米国子会社が製造販売するインダクター4品目が乾坤の特許を侵害しているとして、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提訴したことが分かった。証券会社は、今後デルタ側がチリシン製品の輸入差し止めや仮差し押さえを申し立てれば、チリシン顧客が発注先を変更する可能性があると指摘した。3日付経済日報が報じた。

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 乾坤科技のチリシン提訴は、受動部品の供給不足、価格高騰が続く中で、受動部品メーカー大手同士の初となるケースだ。デルタ側は今年2月、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提訴し、7月初旬に審理前協議が開かれたが、チリシン側は出席しなかった。連邦地裁は年内に和解協議を開く予定だが、デルタ側がさらなる攻撃に出る可能性もある。

 デルタは米国で提訴した理由について、受動部品を使用する携帯電話、ノートパソコンなど液晶パネル搭載電子製品は、北米が最大の輸出先のためと説明した。

 チリシンは2日、デルタの主張には争うべき点が多く、特許弁護士に反論資料の準備を依頼していると明らかにした。

アップル受注狙いか

 業界では、両社はいずれも米アップルのスマートフォン「iPhone」のサプライヤーで、デルタの訴訟の目的はアップル受注を増やすこととみられている。

 チリシンは、インダクターの台湾最大手で、従業員1万2,000人。近年、M&A(合併・買収)、人材引き抜き、生産能力拡大などで、一体成型構造インダクター事業を強化し、アップル、HPなど北米受注を拡大したとされる。

 チリシンは美磊科技(マグレイヤーズ・サイエンティフィック・テクニクス)と美桀科技(マジック・テクノロジー)買収により、今年、一体成型構造インダクターの生産能力が7億8,000万個、世界首位となる見通しだ。インダクターの世界市場シェアは13%と、大手3社の▽TDK▽村田製作所▽太陽誘電──との差を1ポイント未満に縮め、来年にも3位入りの可能性がある。

 一方、乾坤科技は10年前、一体成型構造インダクターでその名を知られ、台湾の受動部品業界で初めてアップルからの受注に成功した。デルタが2010年3月に完全子会社化しており、今年上半期の純利益は6億400万台湾元(約22億円)で、デルタの純利益60億5,800万元の約1割を占めた。

 乾坤科技は従業員が数千人で、研究開発(R&D)人員が300人以上を占める。特許を349件取得しており、うち北米が115件。インダクターの他、小型コンデンサーの「0201」や、さらに小型の「01005」などの製品があり、技術開発力がある。

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