ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

TSMCのウイルス感染事件、スマート化が裏目に


ニュース 電子 作成日:2018年8月7日_記事番号:T00078545

TSMCのウイルス感染事件、スマート化が裏目に

 ファウンドリー最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は6日記者会見を開き、3日午後に発生したコンピューターウイルス感染で停止した生産設備が全面復旧したと発表した。魏哲家総裁は、ウイルススキャンを行わずに新設備を社内ネットワークに接続した人為ミスが原因で、ネットワークで生産拠点同士がつながっていたため、1台から北部、中部、南部にまで被害が一挙に拡大したと語った。スマート化が裏目に出て、損失50億台湾元(約180億円)以上もの高い授業料を払う羽目になった。7日付経済日報などが報じた。

/date/2018/08/07/00top_2.jpgTSMCに対する不安を緩和するため、魏総裁が自ら記者会見で説明、「次はない」と強調した(6日=中央社)

 魏総裁によると、ウイルスはランサムウエア(身代金要求型ウイルス)「WannaCry(ワナクライ)」の亜種で、設備の再起動が必要になる。主にマイクロソフト(MS)のWindows7(ウィンドウズ・セブン)搭載設備が被害を受けた。5日には全ての設備のウイルススキャンを終えたが、念のために再起動したため時間がかかったという。

 魏総裁は、今後は人手でのウイルス検査に加え、自動検査を導入し、被害拡大を防ぐファイアウォールを設置するなどセキュリティー対策を強化し、再発防止に努めると表明した。なお、従業員によるUSBデバイスの持ち込みが原因という観測は否定した。

 魏総裁は、ウイルス感染による第3四半期の売上高減少は2%以下と試算を示した。従来は3%と発表しており、損失予測は79億元から52億元へ引き下げられた。

 何麗梅財務長は、情報セキュリティー保険は情報漏えいが対象で、財物の損失はカバーしないと説明した。

ハイテク各社、いずれも対策

 電子製品の受託生産大手、鴻海精密工業、広達電脳(クアンタ・コンピューター)、英業達(インベンテック)、和碩聯合科技(ペガトロン)などは、ウイルス感染が拡大しないよう、工場やオフィスごとにファイアウォールを設置している。

 この他ペガトロンは、社内に情報セキュリティーの専門組織を設置し、▽情報▽ソフトウエア▽システム▽ネットワーク▽社内環境──などを厳しく管理し、従業員に対する情報セキュリティー教育を実施していると説明した。

 液晶パネル最大手、友達光電(AUO)も、情報セキュリティー専門組織を設置し、ファイルやデータを厳しく管理している他、ファイアウォールを設けていると表明した。

セキュリティー保険に商機

 金融監督管理委員会(金管会)の顧立雄主任委員は6日、上場店頭公開企業1,600社余りに対し、情報セキュリティー保険加入状況を調査し、保険加入の有無によってコーポレートガバナンス(企業統治)評価を加点するか検討すると述べた。金管会は先日発表したアクションプランの中で、今後3年で情報セキュリティー保険の保険料収入を25%成長させるとしている。

 保険事業発展中心(保発中心、TII)の統計によると、昨年の情報セキュリティー保険の契約件数は303件、保険料収入は6,416万元だった。業界関係者によると、情報セキュリティー保険を販売しているのは11社で、上半期の契約件数は77件、4,500万元だった。損害保険業界にとって商機となりそうだ。