85度Cが「一つの中国」支持表明、蔡総統訪問でボイコット騒ぎ


ニュース 商業・サービス 作成日:2018年8月16日

85度Cが「一つの中国」支持表明、蔡総統訪問でボイコット騒ぎ

記事番号:T00078724

 喫茶店チェーン大手、85度Cの米ロサンゼルス市内の店舗に、中南米訪問のトランジットで同地を訪れた蔡英文総統が12日に立ち寄り、従業員らと交流した。これに中国のネットユーザーが反発し、ボイコット(不買運動)の声が出たことから、同社は「(一つの中国の立場に立つ)1992年の共通認識(92共識)」への支持声明を発表し、騒ぎの沈静化に努めた。中台関係の悪化とともに、台湾の企業・著名人に政治的圧力を掛ける中国の横暴さがますます目立つようになっている。16日付聯合報などが報じた。

/date/2018/08/16/00cof85cfe_2.jpg北京市内の85度Cの店舗。様子は普段と変わりなく、抗議者が押しかけるといった光景はみられないという(15日=中央社)

 中国のニュースサイト、東方網が現地華僑の話として報じたところによると、蔡総統は12日、85度Cのロス市内の店舗を訪れ、従業員から特製のお土産を手渡された。この華僑は「中国でビジネスをしながら台湾独立を支持するのは受けいれ難い。唾棄(だき)すべきだ」と85度Cを批判。すると85度Cの中国版ツイッター、微博(ウェイボー)の公式アカウントに、商品をボイコットするとの中国ネットユーザーによる書き込みがあふれた。

 福建省泉州市の店舗は15日、現地の市場監督管理局から中秋節、国慶節前の例年の食品安全調査を理由に、突然の臨店検査が行われた。現地メディア「東南早報」によると、検査担当者は泉州市の85度C水頭店で、一部の食品材料を床に並べるなどし、店舗の改修を要求したという。

 また、「Ele.me(餓了麼)」「美団」「大衆点評網」などの中国のフードデリバリーサービスや情報関連サイトから、85度Cの情報を検索できなくなる事態も起きた。

蔡総統歓迎を否定

 こうした状況を受けて85度Cは、「『92共識』を強く支持し、両岸(中台)同胞の気持ちを分け隔てるいかなる行為と言論にも反対する。『両岸一家親(中台は一つの家族)』の信念で、海峡両岸の消費者に優れた製品とサービスを提供する」との声明を公式ホームページなどに掲載。また、蔡総統に特製のお土産を渡したと報じられたことについては「事実ではない」と否定した。「1人の従業員が店内にあったマスコットの『パブロパン』の抱き枕を差し出し、台湾当局の指導者から個人的な記念としてサインをしてもらったものだ」と経緯を指摘し、企業として蔡総統を歓迎したのではなく、事前の準備も行っていなかったと表明した。

 これには当然、台湾の消費者から反発の声が上がった。台湾85度Cは「企業は従業員に対して責任がある」と弁明した。

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 85度Cは今年第1四半期売上高全体に占める中国市場の割合が64%で、台湾は16%、米国・オーストラリア・香港などが20%と、中国が最重要市場となっている。

行政院「85度Cに同情」

 85度Cによる「92共識」への支持表明に対し、総統府の黄重諺報道官は「市場の秩序と言論の自由に干渉する、不当な行いを非難する」と中国を批判。行政院のコラス・ヨタカ報道官も「85度Cに非常に同情する。中国政府が政治力と特定のイデオロギーで国際企業の経営に圧力を掛けることを強く非難する」と表明した。

台湾企業に強まる圧力

 85度Cの事件は、中国当局から政治問題でいついかなる形で圧力を受けるか分からない、台湾企業の置かれた苦しい立場を物語っている。問題発生直後に「92共識」への支持を表明し、被害の拡大を防いだことは、民間企業のリスク管理の在り方としては妥当といえ、批判するのは困難だろう。

 台湾企業が「一つの中国」支持を迫られたケースは、古くは独立支持派の奇美実業創業者、許文龍氏が2005年に中国の「反国家分裂法」への賛同を台湾主要紙で表明したことにさかのぼる。12年には宏達国際電子(HTC)の王雪紅董事長が、16年には大手海鮮レストランの海覇王が「一つの中国」支持を表明した。

 今年は3月に全地球測位システム(GPS)機器大手、ガーミンが、中国版ウェブサイトで台湾を国家扱いしていたことが発覚して謝罪、中国の主権と領土保全を尊重するとの表明を迫られた。

 また、福建省漳州市で漳州台商協会の名誉会長を務めていた李栄福氏は、台湾海峡の中間線近くを通る航空路「M503」をめぐる中台間の対立で、蔡総統支持を表明したため、漳州台商協会から除名された。

 最近は女優の宋芸樺(ビビアン・ソン)さんが、「一番好きな国は台湾」というかつての発言を問題視され、「わたしは中国人」との表明を迫られた。

 中国が巨大市場を武器に海外大手企業に圧力を掛けることは、世界の航空会社に対し台湾を国家として扱わないよう求めた問題でもみられた。中国市場から撤退するわけにはいかないため、各社はそれぞれ対応を迫られた。

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