台湾中油から基礎原料の供給を受ける下流の中間原料メーカーが、相次いでポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)など、製品の値上げに踏み切っている。値上げ幅はPPで過去2番目に大きい約10%に上る。中油の第3・第4ナフサプラントが原水の塩化被害で6月末まで15%の減産実施を決めたことで、基礎原料が供給不足に陥ったことが値上げの理由だ。3日付経済日報が報じた。
中油の幹部によると、第3・第4ナフサプラントの製造工程で使用する冷却作業用水の塩化が深刻になり、導電度が1,000ppm以上に達した。このため稼働の一時停止を検討したが降雨によって導電度が800ppm以下まで低下したため、15%の減産で稼働を続けることを決めた。
また、高雄製油所の第5ナフサプラントも劣化したパイプラインの交換作業のため15%の減産を行っている。このため、第3~第5の各プラントの生産能力利用率は85%の水準になっている。
中油の減産に伴い値上げを実施した下流メーカーは、▽台湾塑膠工業(フォルモサ・プラスチックス)▽華夏海湾塑膠(チャイナ・ゼネラル・プラスチックス)▽大洋塑膠工業(オーシャン・プラスチックス)▽台湾聚合化学品(USI)▽亜洲聚合(アジア・ポリマー)▽福聚(TPP)▽李長栄化学工業──など。
製品別の値上げ幅は、▽ポリエチレン、1キロ当たり2台湾元(約6.9元)▽ポリプロピレン、同3元▽ポリ塩化ビニル(PVC)、同0.5元──となっている。 また、台塑と亜聚は2日、▽高密度ポリエチレン(HDPE)▽直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)▽低密度ポリエチレン(LDPE)▽エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)などの販売価格を1キロ当たり2元引き上げることを決めた。台聚もLDPEとEVAを1キロ当たり2元、HDPEとLLDPEを同2.3元引き上げた。値上げ幅は2.8~4%となる。
下流メーカーはエチレンやプロピレンなど基礎原料の価格上昇によって利益が圧縮されるため、「高売上高、低利益率」という状態ににさらされる恐れがあると中油では分析している。なお、石化業界は第3四半期よりハイシーズンに入るため、これら中間原料価格はさらなる値上げも見込まれる。
台塑集団は恩恵
一方、中油の減産によって最も恩恵を受けるのは台塑集団(フォルモサ・プラスチックグループ)だ。
業界関係者によると、台塑集団の傘下企業は雲林県の麦寮第6ナフサプラントに集中しており、集集貯水堰の原水を利用しているため塩化問題とは無縁だ。
台塑石化(フォルモサ・ペトロケミカル)から台湾塑膠工業、南亜塑膠工業(ナンヤ・プラスチックス)、台湾化学繊維(フォルモサ・ケミカルズ&ファイバー)など関係企業への基礎原料の供給は正常に行われており、今後引き合い増が見込まれる。