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工業用地価格高騰で取得困難、米中貿易戦争余波


ニュース その他分野 作成日:2018年9月20日_記事番号:T00079375

工業用地価格高騰で取得困難、米中貿易戦争余波

 米中貿易戦争によって、中国の生産拠点を縮小、台湾へのUターン投資を目指す企業が増えているが、北部の工業用地は価格高騰、供給不足で、取得が困難な状況だ。経済部工業局の新北産業園区(新北市五股区、新荘区)では1坪当たり80万台湾元(約290万円)と4年前と比べ3割上昇、桃園市の一部では4割以上上昇している。経済部は中国の台商(台湾系企業)に対し、北部は用地に余裕がないため中南部での工場建設を検討するよう呼び掛けている。20日付蘋果日報などが報じた。

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 北部の工業用地は、桃園市の平均価格が2014年の1坪当たり12万4,200元から翌15年に15万1,800元に上昇した後、15万元台が続くなど、住宅価格調整の影響を受けず高値が続いている。

 米中間の貿易摩擦によって昨年末から中国の台商がUターン投資用地の物色を始め、価格が一段と高騰している。Uターン投資を検討中のある電子業の企業は、宜蘭県の利沢工業区で1坪3万~4万元から6万~7万元に、新北産業園区で80万~100万元まで上昇しており、驚いたという。しかも、新北産業園区では実際は入手できる用地がないなど、供給の少なさも大きなネックとなっている。

 英サヴィルズの台湾法人、第一太平戴維斯(サヴィルズ台湾)によると、北部の主要工業区の14年以降の上昇幅は、桃園市の▽観音工業区、43%▽桃園科技工業園区、40%▽中壢工業区、40%──がいずれも40%台。次いで、▽新竹工業区(旧・湖口工業区)、36%▽新北産業園区、33%▽蘆竹海湖坑口工業用地(桃園市蘆竹区)、32%──などとなっている。

台湾生産が低コストに

 あるハイテク企業の経営者は、中国で近年、労働者の賃金や、環境コストが上昇した結果、個別半導体(ディスクリートデバイス)やダイオードは、中台の生産コスト差が10%以下に縮小したと指摘。今後、トランプ米政権が第4弾、2,760億米ドル規模の対中制裁関税を発動するならば、多くの電子部品は台湾で生産した方が、中国よりもコスト面で有利になるとの見方を示した。

 台湾生産は自動化、スマート化が強みで、自動化の水準が高ければコスト低減を実現でき、労働力不足をカバーできる。ある業者は「自動化が十分であれば米国生産も選択肢だ。米中貿易戦争の展開からみて、中国はもはや投資意欲を抱かせる条件と環境を備えていない」と話した。

中南部進出を呼び掛け

 北部の工業用地価格高騰と供給不足問題について経済部の幹部は19日、北部で用地を供給できるのはもはや新竹科学工業園区(竹科)銅鑼科学園区(苗栗県銅鑼郷)の20ヘクタール余りしかないため、中南部の▽彰化浜海工業区(彰化県鹿港区、線西区)▽雲林科技工業区(雲林県斗六市)▽台南科技工業区(台南市安南区)──を投資先として検討すべきで、経済部が協力すると呼び掛けた。また、今後、大型インフラ整備計画「前瞻基礎建設計画」に沿って北部、中部、南部で工業区の開発を進めるため、将来は用地供給が可能になると説明した。

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