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ASEメキシコ工場に追加投資、米中貿易戦争に対策


ニュース 電子 作成日:2018年10月12日_記事番号:T00079776

ASEメキシコ工場に追加投資、米中貿易戦争に対策

 半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)世界最大手、日月光投資控股(ASEテクノロジー・ホールディング、ASEH)​の呉田玉営運長は11日、米国の車載向け需要を好感し、メキシコ工場に追加投資を行う考えを明らかにした。呉営運長は、米中貿易戦争は消費市場にマイナスの影響があるとしつつ、ASEは世界各地に生産拠点を擁しており、顧客の生産地変更の要望に対応できると説明。来年の半導体景気は、第5世代移動通信(5G)など新応用分野の拡大で、やや楽観視できるとの見方を示した。12日付自由時報などが報じた。

/date/2018/10/12/00top_2.jpg呉営運長は、シリコンバレーの半導体メーカーや最終製品メーカーを顧客とするISEラボを台湾メディアに案内した(11日=中央社)

 呉営運長は、米国シリコンバレーの封止・検査工場「ISEラボ」で台湾メディアの取材に応じた。

 呉営運長はメキシコの他、高雄工場と中壢工場(桃園市)でも生産拡大を続行すると説明した。ASEにとって台湾工場は、傘下の矽品精密工業(SPIL)を合わせて従業員6万人を抱える主要生産拠点だ。ASEは、メキシコ、台湾の他、▽米国▽中国▽日本▽韓国▽シンガポール▽マレーシア▽東欧──など世界18カ国・地域に封止・検査工場を構え、従業員10万人以上を抱える。

 呉営運長は、顧客からの生産地移転要望はまだないが、制裁関税で実質的な影響が出ないか多くの顧客が案じていると指摘。顧客が関税問題だけを理由に生産拠点を移すことはないようだが、同社は世界各地に拠点があるので、顧客対応力とリスク管理は同業を上回ると説明した。

 また呉営運長は米中貿易戦争について、最終製品の市場にマイナスの影響をもたらすもので、動向を注視すると述べた。米中貿易戦争の影響で、消費市場の需要が減退すれば、台湾メーカーは他社からの転注が増えても相殺され、良いことなどないと語った。

 外資系証券会社が半導体業界の見通しを懸念していることに関し呉営運長は、短期的な変動はあるものの、▽5G▽人工知能(AI)▽モノのインターネット(IoT)▽ビッグデータ▽スマートホーム▽スマートファクトリー▽スマートカー──などの分野で半導体デバイス需要が大幅に増加するとして、来年の半導体景気はやや楽観できるとの見方を示した。ASEの成長率は、今後10年も業界平均の2倍を維持すると予測した。

SiP市場、10年で10倍に

 呉営運長は、ASEのシステム・イン・パッケージ(SiP)は▽携帯電話▽ネットワーク機器▽車載用▽医療▽ウエアラブル(装着型)端末▽家電──など幅広い製品に採用されていると説明。今年のSiP関連売上高は、前年より数億米ドル増え、2019~20年は成長が加速すると予測した。

 半導体業界で「ムーアの法則」(半導体の集積密度は18~24カ月で倍増する)の限界が近づくと懸念される中、これを補うSiP開発をASEは近年強化しており、▽フリップチップMCM(マルチチップモジュール)▽ファンアウト型SoC(システム・オン・チップ、FOSoC)▽2.5次元(2.5D)封止──など多くのSiPソリューションを提供している。

 ASEのSiPは、アップルのスマートフォン「iPhone」新機種、腕時計型ウエアラブル(装着型)端末の新製品「Apple Watch Series 4(アップルウオッチシリーズ4)」も大量に採用しているとされる。また、半導体の自社設計が増え、SiP採用が進む中、ASEはOEM(相手先ブランドによる生産)や最終製品メーカーとSiPを共同開発しているという。

 さらにASEは、AIと高性能計算(ハイパフォーマンスコンピューティング、HPC)発展に伴い、エッジコンピューティングにSiPが大量に採用されるとみている。張英修シニア副総経理は、今後10年でSiP市場規模が10倍に成長すると期待感を示した。