ニュース 政治 作成日:2018年10月15日_記事番号:T00079800
40日後に迫った統一地方選挙で、民進党の地盤の高雄市で「韓流」の勢いが大きな注目を集めている。国民党から出馬する韓国瑜氏(61)が若者を中心に人気を集め、民進党から立候補する陳其邁氏(53)を話題性で圧倒、支持率調査で互角の戦いを演じている。背景には、蔡英文政権の人気低下とともに、20年間続いてきた民進党市政に飽きが来ていることがある。
国民党の韓国瑜氏。4年前の柯文哲ブームを思い出させる人気から、民進党の台北市議から「髪の毛の無い柯文哲」と評された(13日=中央社)
韓氏は台北県(現新北市)の眷村(けんそん、外省系住民の集落)出身の外省人で、1993年から2002年1月まで立法委員を3期務めた後、同県中和市の副市長を経て、12年12月から昨年3月まで台北市一帯の農産物の卸売りを担う台北農産運銷公司(北農)の総経理を務めた。昨年5月の国民党主席選挙に立候補して、呉敦義現主席(70)に敗れている。来月の統一地方選挙では当初台北市長への立候補を目指したが、4月に高雄市長選挙に打って出ることが決まった。
高雄市は民進党が98年末以来市長を務め、市内9選挙区の立法委員は全員民進党、市議会も民進党と友党の台湾団結聯盟(台聯)で過半を占める「民進党王国」だ。謝長廷氏、陳菊氏と続いた有力市長の前に国民党は候補者探しにさえ苦労をしてきた。今回の民進党候補の陳其邁氏は高雄市出身で、立法委員を96年から04年まで3期務め、その間、議員団幹事長を二度にわたって担当した。政務委員(無任所大臣)、高雄代理市長、民進党政策委員会執行長などの経験もあり、高雄市長はさらなる高みを目指す上で重要なステップとみられている。
地盤沈下を批判
落下傘候補の韓氏は当初、民進党のサラブレッドである陳氏に歯が立たないとみられていたが、民進党市政の20年が高雄市の地盤沈下を招いたと批判、率直な言動がインターネット上で若者の人気を集め、国民党寄りの大手紙・聯合報が9月25日に発表した支持率調査では陳氏34%に対し、韓氏32%とほぼ互角となった。15日付蘋果日報でも両者の差は2.6ポイントにすぎない。
韓氏は市の経済発展を訴えており、旗津区に離島建設条例を適用して免税特区とすべきと主張。将来のカジノ誘致に含みを持たせている。
一方民進党は、愛河の護岸整備と水道水の水質改善、都市交通システム(MRT)とライトレール(LRT)開通、台湾鉄路(台鉄)地下化などを実績として挙げ、韓氏の主張に反論している。
韓氏の人気を支えているのは、民進党市政に対する飽きだ。高雄市は中国人観光客が来なくなって不景気感が強まり、仕事が見つからない若者の市外流出が目立っている。こうした中、市政に変化を求める潮流が強まっている。
独立派の票固めへ
ただ、聯合報の調査でも「実際に当選する候補者」との質問では、陳氏が42%と韓氏の19%を引き離しており、同市での民進党の支持基盤が最終的には陳氏を当選させると考えられている。民進党は今後、統一・独立問題や台湾アイデンティティーといったテーマで、独立派支持層の票を固める戦略だ。
民進党は統一地方選挙で苦戦が伝えられており、現在保有している桃園、台中、台南、高雄の4直轄市の市長ポストを維持できるかに関心が集まっている。特に注目されるのが現職の林佳龍氏と国民党立法委員の盧秀燕氏が争う台中市と、高雄市だ。仮に両市とも失うようなことがあれば民進党は惨敗で、再来年の総統選挙での政権維持に暗雲が立ち込める。
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