奇美電子(CMO)が発光ダイオード(LED)への投資を拡大する。傘下のLEDメーカー、奇力光電科技(チーメイ・ライティング・テクノロジー)が、エピタキシャル工程で使用するMOCVD装置を3年以内に当初予定の50%増となる150台に増やす計画で、業界最大手の晶元光電(エピスター)が今年予定する170台に迫る。9日付工商時報は、液晶パネルや半導体大手による相次ぐ投資強化によって、LED業界の再編が起きる可能性は高いと指摘している。
奇力は2006年9月の設立で、董事長は奇美電の廖錦祥董事長が、総経理は呉炳昇奇美電執行副総経理が兼任している。本社は南部科学工業園区樹谷園区(台南県新市郷)で、昨年中国にも工場を設置した。
同社が現在所有するMOCVD装置は6~10台だが、何昭陽奇美電総経理はこれを150台に拡大する計画を明らかにした。また、照明やバックライト、自動車照明、看板などの産品を対象にしたLEDパッケージングにも進出する考えだ。奇力の現在の投資計画は「5年内に100億元」だが、この規模をさらに拡大する。 奇力は今年第2四半期、単月売上高が前年同月比50%増の6,000万台湾元(約2億800万円)に上り、初の単期黒字計上を果たす。今年の通年売上高は20億元に達する可能性もあるということで、今後3~5年は毎年30~50%の高成長を見込んでいる。
奇美電は今年初頭、傘下の元奇投資を通じて兆晶科技(テラクスタル・テクノロジー)と鑫晶鑽科技に15%出資し、これによりLEDサファイア基板、シリコンインゴット、シリコン生成の各分野に進出。LED分野での旺盛な事業意欲を見せつけた。
資金規模で圧倒か
LED市場には、奇美集団以外にも、友達光電(AUO)、台湾積体電路製造(TSMC)、聯華電子(UMC)と、台湾を代表するパネルおよび半導体メーカーが進出を強めている。
奇力が150台に拡大しようというMOCVD装置は、LED専業では晶元を除けば璨円光電が30台、華上光電(アリマ・オプトエレクトロニクス)が26台、新世紀光電(ジェネシス・フォトニクス)が25台といった規模だ。
ある業界関係者は、「25台程度しか持たないLEDメーカーが一大決心をして生産能力を倍増させたところで、大手パネルメーカーは苦もなく100台、150台と注ぎ込む。どうやって対抗するというのか」と語る。
大手パネル・半導体メーカーには豊富な資金と人材があり、工商時報は「進出タイミングさえ間違えなければ、殺傷力は非常に強い。今後、派手な合従連衡劇が演じられ、それが終った後、業界の顔ぶれは一変しているだろう」と論評している。