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柯台北市長の再選、「棄姚保柯」が鍵に


ニュース 政治 作成日:2018年11月12日_記事番号:T00080321

柯台北市長の再選、「棄姚保柯」が鍵に

 来週末24日に投票日を迎える台北市長選挙は、無所属で現職の柯文哲候補(59)が、国民党の丁守中候補(64)の追撃をかわせるかが焦点になっている。大手紙の支持率調査でも、直近の蘋果日報で柯候補34.1%に対し丁候補31.4%と2.7ポイントまで差が縮まり、どちらが勝ってもおかしくない状況となった。支持率が7.1%まで低下し、当選の可能性がほぼなくなった民進党の姚文智候補の支持者が、国民党の市政奪還を阻むために柯候補に投票するか否かが選挙結果を左右する情勢となってきた。11日付蘋果日報などが報じた。

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 柯候補の支持率は2カ月前の9月調査時34.9%より0.8ポイント低下。これに対し丁候補は0.6ポイント上昇、姚候補は3.3ポイント下落した。柯候補と丁候補の差は2.7ポイントとなった。国民党寄りの旺旺中時媒体集団の世論調査では、柯候補は33.6%、丁候補は32.8%、姚候補は14.8%で、柯候補と丁候補の差は0.8ポイントまで縮小した。今月1日付の聯合報では3ポイント差だった。

 丁候補の追い上げについて国民党台北市党部の黄呂錦茹主任委員は、高雄市の韓国瑜候補(61)人気の波及、丁候補の建設関連の公約が中間層の支持を得たこと、さらに、柯候補の選挙対策本部総幹事で作家の小野氏(本名=李遠)が、高雄市長選で民進党の陳其邁候補支持を表明したことによって、国民党支持層が柯候補は蔡英文総統と同一陣営と認識したことを挙げた。

/date/2018/11/12/00top2_2.jpg丁候補(左3)の選挙集会には、馬英九前総統(左2)、呉敦義国民党主席(左4)、朱立倫新北市長(左1)ら国民党の重要幹部が応援に駆け付け(11日=中央社)

 小野氏による陳候補支持表明は、姚文智候補の支持者に対し、柯氏への投票を期待したものと分析されている。黄呂主任委員は、この戦術は国民党支持層の反感を招き、丁候補への投票意欲を高めたとの見方だ。

熱気が減退

 柯候補は10日、陣営初の大型選挙集会を開いたが、参加者は警察統計で1万人にすぎなかった。4年前の選挙パレードに同統計で9万6,000人が集まったのと比べ、熱気の減退を感じさせる。

/date/2018/11/12/00top1_2.jpg選挙集会で気勢を上げる柯候補(左3)、4年前はインターネット世論を動かしての勝利だったが、今回、ネットの話題は韓国瑜候補に集中。この面でも影が薄くなっている(10日=中央社)

 当時、「オープンな政府、公民の参加」をスローガンに、「青(国民党)でも緑(民進党)でもない白色の力」を掲げた柯候補は、二大政党の対立に嫌気が差していた中間層の支持を獲得し圧勝した。しかし、市長としての4年間の実績は不十分との評価が39.6%に上り、10日行われた候補者同士の弁論会でも守勢が目立った。

 柯候補は「選挙の最後の2~3週間、もし青と緑がそれぞれ5%ずつ得票率を引き上げたら私は敗れてしまう」と、組織票を持たない弱みを率直に語る。

「柯候補は危機に」

 台北大学公共行政・政策学系の侯漢君教授は、台北市では小野氏の陳其邁候補への支持表明こそが、国民党支持層が投票意欲を高めた最大要因となったと指摘した。今回、国民党支持層が結集すれば、丁候補の得票率は、前回、不人気だった連勝文候補ですら獲得できた40%を下回ることは考え難いため、姚候補が柯候補の得票の4%を奪えば柯候補は危機に陥ると分析している。

 姚候補を捨てて柯候補を支持しようという「棄姚保柯」の流れは現時点ではまだ見られないとされる。だが、政治大学選挙研究センターの俞振華副研究員は「泛緑(汎民進党陣営)支持層が、涙をのんで柯候補に投票するか否かが選挙の帰趨(きすう)を決める」との見方を示した。大詰めの民進党と柯候補陣営の戦略が注目される。

【図】