中国鋼鉄系列のH形鋼メーカー、中龍鋼鉄(ドラゴン・スチール)が計画している第2期第2段階の高炉拡張計画(台中港)の環境アセスメントが9日、「二酸化炭素(CO2)削減目標を達成できなければ、排出料を支払う」という条件付きで環境評価大会を通過した。決定はエネルギー産業など今後の投資案に対する審査に影響を与えるとみられるが、削減目標の根拠となる法律は依然審議中で、環境保護団体などからは「欺まん」という批判が上がっている。10日付経済日報などが報じた。
中龍の高炉拡張計画は、250万トンの生産能力を持つ高炉2基を建設するもの。第1期工事となる1基目は既に着工しており、投資額は789億台湾元(約2,767億円)。さらに熱延製品の生産ラインにも300億元を投じる。2基目の高炉は約800億元を投じ、2011年に完成させる計画だ。拡充される500万トンの生産能力のうち、120万トンをビレット生産に、380万トンを熱延コイル生産に充てる計画だ。
政権交代後初の大型プロジェクトに対する審査となった今回の環境評価大会で、沈世宏環境保護署長は、「業者は今後、政府による削減目標の割当に即してコスト計算を行わなければならず、さもなければ『環境評価法』および今後成立する『温室効果ガス減量法』に基づいて処分する」という、温室効果ガス排出削減に厳しく取り組む姿勢を示した。
目標未達成なら15億元
沈署長によると、「減量法」の成立後、中龍は15%のCO2排出量削減を課せられることになり、達成できなければ植樹または排出権購入などの「排出費用」を支払わなければならない。排出費用は1トン当たり約1,000元で、中龍の15%削減は金額にして15億元に相当する。
ただ同日付工商時報によると、環保署関係者が示した審理の記録には、「環境評価大会では中龍に対し将来の割当分に基づいて排出量削減を目指し、達成できなければ運営中止とする」とだけ記されており、15億元の排出費用、業者に対する強制力については言及されていなかったという。
中龍の欧朝華董事長は、「CO2排出量の削減は選択の余地のない問題だ。法律はまだ成立していないが、この(15%削減という)数字は心に刻んである」と語った。ただ、この削減目標が厳しすぎるものであれば減産を実施し、最終的には鋼材価格の値上げにつながるとして、「政府も心の準備が必要」と釘を刺している。
規則あいまい、監督も不能
今回の審査について経済日報では、法律は不遡及を原則とするため、「未来法」に基づく排出量削減要求は根拠が弱いとし、さらに、もし「減量法」が成立しなければ各企業にどれだけの排出権を割り当てるかはまったく白紙の状態となる、と決定に疑問を示した。
また、台北大学の廖本全副教授も、「法律が整備されていない状態では、企業が遵守すべき規則もなく、環境団体も監督するすべがない」と、非難されるべき結論だと批判した。
「台プラ製鉄所はもう不要」
中龍が2012年までに高品質鋼材の年産能力を500万トン拡充するため、環境団体はからは、「これで域内の需要に対する鉄鋼供給量は十分」として、台塑集団(台湾プラスチックグループ)が雲林県で計画する製鉄所はもはや不要で環境アセスを通過させるべきではないとの声が上がっている。しかし台プラ側は、「政府の許可があれば継続して推進する」とコメントしている。