ニュース その他分野 作成日:2018年11月23日_記事番号:T00080566
三井住友銀行セミナーレポート三井住友銀行(SMBC)台北支店主催の「2018年度経済講演会」が21日、台北市内で行われ、日系企業のビジネスパーソンなど約200人が参加した。
本稿では三井住友銀行台北支店に特別に許可を得て講演会の概要を掲載する。
第一部 ~グローバル市場のなかでの台湾経済および台湾ドル~
三井住友銀行 市場営業統括部 西岡純子氏
米国がドル高となりドルに対し新興国の通貨が売られ続けている。また中国の人民元は2018年に入り急激に売られている。
原因は米国の関税増加だが、西岡氏は中国政府がこのまま人民元を放置し続けることは無いのではとみている。
今後の米国経済は米連邦準備制度理事会(FRB)による政策金利の引き上げやトランプ政権の通商交渉など足を引っ張る要素が多いとの見方を示した。
三井住友銀行 市場営業統括部 西岡純子氏
中国経済は計画通りの減速基調が続き、なだらかに経済成長率が落ちていると述べた。
中国の金融市場は政府のコントロールが効くのでこのまま下落が続くのはあり得ないが、世界的サプライチェーンからの中国外しが実現すると、人民元が下がる局面になると予想した。
台湾経済については「マクロ指標をみる限り中国と全く違う」とし、原因の一つに米ドル、日本円に続き世界で3番目に強い通貨である台湾ドルの存在を挙げた。その他にも過去最高水準の外貨準備や安定したインフレ率など「マイナスよりプラス材料が圧倒的に多い」と締めくくった。
最後に日本については日米貿易摩擦の問題が大きく、個別品目の関税引き上げはそれほど痛くはないが為替協定の締結は一番痛い打撃になると述べ、日本にとってのワーストシナリオは円安を禁止されることだと述べた。
第二部 ~東アジア電気・電子部品業界の展望~
三井住友銀行 コーポレート・アドバイザリー本部 企業調査部(香港) 神谷直良氏
スマートフォンはiPhone、先進国・地域と中華圏のAndroidともに成熟化の見込み。2019~2020年ごろに5G(第5世代移動通信システム)サービスが開始する見込みで、また、5Gに対応するスマホの登場がアナウンスされ、市場成長要因として期待されている。ただし、当面サービス範囲は一部地域に止まる見込みで、端末でも一部部品がボトルネックになる可能性がある。
三井住友銀行 コーポレート・アドバイザリー本部 企業調査部(香港) 神谷直良氏
大型パネル(テレビ向け)では中国メーカーを中心に生産能力が拡大、需給悪化が続く見込み。これを受けて業界全体で供給調整が起こるとみられる。有機EL(OLED)パネルへの生産ラインの転換が計画されている模様だが、供給調整の一環とも捉えられる。
スマホ向け中小型パネルでは、韓国・中国メーカーが有機ELパネル量産を進める。ただし中国メーカーをはじめ、これから本格量産を始める企業は、有機ELパネルの歩留まり確保には時間を要するとみられる。
大手半導体メーカーが増産を続ける上、政府の支援を得て中国地場メーカーが半導体工場の新設計画を相次いで打ち出している。ただし中国メーカーによる本格量産には時間がかかる。ファウンドリー業界やメモリー業界において、技術面で先行する韓国、台湾メーカーの優位が続く。中国勢は約5年前の旧世代技術の量産に向けて動いているという状況と理解している。
第三部 中国自動車市場の動向
~EV化からみる中国自動車産業構造の変化・ベンチャーや異業種参入が加速する新規ビジネス~
三井住友銀行(中国)有限公司 コーポレートビジネス 推進部 曽根淳史氏
1.2018年中国自動車販売予測
中国国内自動車販売実績は2018年上半期は5.6%のプラス成長だったが今年は全体でもマイナス成長となる予想。
急ブレーキがかかった原因
(1)習近平国家主席が海外から輸入する自動車の関税を25%→15%に下げると発表(7月1日から)
(2)その後米中貿易交渉になり、自動車販売5~7月は不振
(3)8月以降はディーラー在庫過剰、毎日値下げが行われている
(4)以前の中国車は耐用年数が短かったが、現在は品質が上がり買い控え
中国市場はモータージェネレーションが起こる下地がやっと整った状態でこれから少なく見積もっても米国並みの新車購入が見込める市場となると述べた。
三井住友銀行(中国)有限公司 コーポレートビジネス 推進部 曽根淳史氏
2.中国NEV規制
中国版NEV(新エネルギー車)規制はポイント制で非常に高性能な電池、インバーター、軽量化が必要でプラグインハイブリッドではどんなに良くても2ポイントしか取れず、水素自動車は最初から5ポイントと、中国政府が何を広めてゆきたいかの意思が分かる。
3.中国リチウムイオン電池リサイクル
リチウムイオン電池のリサイクルはビジネスとして難しいが、エコカーは自動車メーカーが電池の回収まで責任を負うよう求められた。
現在有力な方法として電池のリース方式によるビジネスモデルが考えられている。
4.中国主力購買層の変化と自動車販売管理弁法
以前の主力購買層は、お金持ちがセダンを現金で買っていたが、少し前は安く、大きく、かっこいい車が売れていた。今後は頑丈、スマート化された車が求められてくる。
5.北京モーターショー
電気自動車(EV)ベンチャーが圧倒的な存在感を持ち、今やEVは当たり前、自動運転レベル3~4のスマート化が進んでいる。中国ではEV産業を中心とした新規ビジネスの可能性を模索しており、地場系完成車メーカーを新エネ車分野でグローバル企業へ育成しようと計画している。
三井住友銀行台北支店「2018年度経済講演会」
日時:11月21日(水)午後2時〜5時15分
会場:張栄発基金会国際会議センター(台北市中正区)
※中国語の同時通訳付き
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