ニュース 政治 作成日:2018年11月25日_記事番号:T00080574
蔡英文政権にとっての「中間試験」の意味を持っていた統一地方選挙は、与党民進党の大惨敗に終わった。重要直轄市の高雄市、台中市を野党国民党に奪回されるなど、首長ポストを選挙前の13県市から半分以下の6県市に減らした。蔡総統は党主席辞任を発表、頼清徳行政院長、陳菊総統府秘書長も辞意を表明しており、同党は激震に見舞われている。一方、2016年総統選で惨敗して政権を民進党に明け渡した国民党は、高雄市の韓国瑜氏が巻き起こしたブームに乗って6県市から15県市に拡大し、20年総統選での再度の政権奪回に有利な位置に立った。
蔡総統(中)は、選挙結果を謙虚に受け止めつつも、民進党は団結し、改革推進を続行すると述べた(24日=中央社)
今回の選挙の主役は、20年に及んだ高雄市の民進党の長期市政を終わらせ、国民党の上げ潮ムードを台湾全土に波及させた韓国瑜氏だった。軽妙な弁舌やスキンヘッドを売りにしたキャラクターから注目され、長期市政に対する飽きという背景があったにせよ、「民進党に対する不信任投票」と「経済発展」の2本立てのスローガンで勝利できたのは、こうした呼び掛けが有権者の心情にまさに合致したからに他ならない。すなわち、蔡政権の政権運営は人々に豊かさをもたらさず、不合格との認識が下地にあった。
蔡政権が最初に重要課題として取り組んだ労働基準法(労基法)改正は、労働時間の短縮には貢献したものの、労務コストが上昇した企業側と、残業代が減少した労働者側双方の不満を買った。軍人・公務員・教職員(軍公教)の年金改革は、取り組みが必須の重要課題であり、政権最大の成果とはなったが、既得権益層には収入を減らされた恨みが残った。
急ぎ過ぎの感のある脱原発政策は、電力供給への懸念を呼んで経済発展にマイナスとの認識を持たれた上、火力発電所への依存が高まり大気汚染の悪化が進んだとのイメージを広げられてしまった。やり玉に上がった台中火力発電所の膝元の台中市で予想外の大差で敗北したこと、住民投票の「大気汚染反対」に圧倒的な賛成票が投じられたことをみると、この問題の影響は小さくなかったとみられる。中国との関係悪化も、観光産業などでビジネスチャンスの喪失を招いてしまった。
好景気も無意味
蔡政権は世界的な好景気と重なり、労働者の経常性給与は昨年12月以降、10カ月連続で前年同月比2%以上の伸びを記録。株式市場の加権指数は今年10月まで過去最長の1年5カ月にわたって1万ポイントの大台を維持した。しかし、外食費をはじめとした物価上昇、特に家賃の高騰によって賃金の伸びが相殺されてしまっている。台湾全土の家賃は4年近くにわたって上昇が続き、特に台北市と新北市では過去5年の上昇率が10%に達した。今回の選挙で話題になった、地方から北部に出てきて働く若い労働者(北漂青年)はこの直撃を受け、好景気をまるで実感できず閉塞(へいそく)感に包まれている。
対中路線に重い課題
全体の結果からは、民進党の支持者が投票に行かなかった傾向を指摘できる。蔡総統は、台湾は中国とは異なる存在との民進党の根幹は守りつつ、より幅広い層から支持を受けるべく独立色を封印した中台関係の現状維持路線を打ち出したが、本来の支持層から不満を持たれてしまった。民進党は、政権与党としての対中路線の在り方について重い課題を突き付けたられたといえる。
蔡総統は惨敗によって次期総統選の候補に選ばれる可能性はなくなった。今回で事実上政治生命が終わってしまった恐れもある。同党が大惨敗をどのように総括し、いかに党勢立て直しに取り組むのか注目される。
次期総統選は20年1月の予定で、ほぼ1年しか残されていない。国民党は表面上は呉敦義主席が勝利を導いた形となったが、選挙戦後半での失言問題で浮き彫りになったように大衆的人気は低く、70歳で年齢も高い。蔡政権への不満の受け皿になった形で息を吹き返しているため、人選を含めて万全な態勢で臨まない限り、総統選で必ず勝利できるとは言い切れない面も存在する。
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