ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム グループ概要 採用情報 お問い合わせ 日本人にPR

コンサルティング リサーチ セミナー 経済ニュース 労務顧問 IT 飲食店情報

「iPhoneに10%課税」、トランプ発言に戦々恐々


ニュース 電子 作成日:2018年11月28日_記事番号:T00080637

「iPhoneに10%課税」、トランプ発言に戦々恐々

 トランプ米大統領は26日、アップルのiPhoneなど中国で生産されるスマートフォンやノートパソコンに対し、10%の追加関税を課すとの見通しを米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビューで語った。iPhoneは新機種販売が不調なところへ新たに大きな悪材料が生じることになり、台湾のアップルサプライチェーンの業績を押し下げる懸念が強い。28日付経済日報などが報じた。

/date/2018/11/28/top_2.jpg

 トランプ大統領の発言は「来年1月1日から2,000億米ドル相当の中国製品に対する関税率を25%に引き上げ、中国政府が要求する見合わせには応じない可能性が極めて高い。交渉が米国に有利な結果とならない限り、まだ対象となっていない中国製品にも課税し、中国で生産されるiPhoneやノートPCには10%の関税が課される可能性がある」というものだ。

 関税が課せられた場合、製品の値上げで対応するケースは多いが、iPhoneは高価格が既に購買意欲に深刻な影響を及ぼしており、アップルが値上げを行うことは難しいとみられる。アップルの選択は、自社で関税の負担を吸収するか、サプライヤーに値下げをさせて自社の利益を守るかのどちらかで、業界ではサプライヤーに値下げを要求する可能性の方が高いとの見方だ。

短期間では対応不可能

 台湾の受託メーカーにとっては、中国からの生産拠点の移転・分散の誘引となるが、新たな生産拠点の整備では、協力メーカーの確保や、新規生産ラインの良品率といった課題があり、短期間で対応できることではない。ある業者は、一流の顧客に供給する新工場の設立には、認証から部品供給体制の確立、環境保全施設など、決定から実際に出荷に至るまでは3年以上必要で、今直ちに米国工場の設置を決めても間に合わないと指摘した。

 アップル製品の受託メーカーは、和碩聯合科技(ペガトロン)が東南アジアに新生産拠点を設置する計画で、広達電脳(クアンタ・コンピューター)が桃園市亀山区で新工場棟を42億8,000万台湾元(約158億円)で購入することを発表している。英業達(インベンテック)も台湾、マレーシア、メキシコの生産能力を拡大する方針だ。

予想以上のマイナスに

 28日付工商時報は、米国による追加の制裁関税発動は、製造業の米国回帰というトランプ大統領が意図するメリットよりも、はるかに大きなマイナスをもたらすと論評した。

 昨年の米国でのiPhone販売台数は6,100万台。9,000万台以上が使われており、米国人の5人に2人はiPhoneを所有している計算だ。iPhoneに10%の関税が課された場合、最も安い新機種でも価格が800米ドルを上回るため、消費者に痛みを与えることになる。

 さらに、iPhoneの生産額は昨年427億米ドルで、サプライチェーンは数百社、関わる勤労者は100万人以上に上る。大規模な産業が米中貿易戦争によって移転するのであれば、移転先がどこであろうと混乱は目に見えている。

 iPhoneは需要期と非需要期の販売台数の差異が激しく、生産管理が問題になる。中国は労働コストが欧米よりも安く、労働者の質も東南アジアやメキシコよりも良いが、需要期の人員確保がますます難しくなっている。その中国から組立工程が移転した場合、米国で需要期にiPhoneが入手できなくなる懸念すらある。

【表】