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台中「山手線」計画、市長交代で中止も


ニュース 運輸 作成日:2018年11月29日_記事番号:T00080663

台中「山手線」計画、市長交代で中止も

 台中市内に大型の鉄道環状線を整備する「大台中山手線」計画が中止される可能性が出てきた。林佳龍市長(民進党)が目玉の政策として掲げてきたが、盧秀燕次期市長(国民党)が29日、財務状況から急ぎの要件ではないと発言した。交通部は、交通インフラは都市の将来像に関わるため、判断は慎重に下すべきと提言した。29日付蘋果日報などが報じた。

/date/2018/11/29/00top_2.jpg盧次期市長(右2)は29日、胡志強前市長(左)を訪問した。胡前市長のBRT事業が落選後直ちに覆されたように、市長が変わるたびに交通インフラ政策が変わるようでは市民生活に悪影響が及ぶことは間違いない(29日=中央社)

 大台中山手線計画は、▽台湾鉄路(台鉄)山線后里駅~海線大甲駅間の「上環彩虹線」(13.4キロメートル)新設▽海線大甲駅~追分駅(30.4キロ)の複線・高架化▽成功駅~追分駅の複線化(下環微笑線)▽山線大慶駅~烏日駅(3.8キロ)の高架化──によって市内に大型の鉄道環状線を設けるもので、昨年、蔡英文政権の大型インフラ整備計画「前瞻基礎建設計画」に盛り込まれ、このうち微笑線は昨年11月に着工、来年の完工が予定されている。

 しかし、24日の台中市長選で当選した盧次期市長は、環状線の構築には1,000億台湾元(約3,700億円)の経費が必要な上、1周するのに2時間もかかり、市民の利用意欲は低いはずと指摘。自身が優先的に取り組むインフラではないと発言した。なお、29日の朝刊各紙は「建設中止」と報じたが、盧次期市長は「建設しないとは言っていない。都市交通システム(MRT)の方が優先度が高いが、民意を尊重し、討議に応じる」と述べ、中止ありきではないことを説明した。

 台中市では、林市長も胡志強前市長(国民党)が推進したバス高速輸送システム(BRT)事業を廃止した前例がある。

 盧次期市長はまた、ドーム施設「台中アリーナ」の建設地を、北屯区の崇徳路と松竹路の交差点付近から別の場所に変更する考えも示した。交通渋滞を悪化させるとの住民の不満が寄せられているためで、現時点では第14期再開発計画区の環中路と松竹路の交差点付近の文教施設用地が候補地と説明した。

高雄LRT、改めて意見聴取

 一方、高雄市でも、韓国瑜次期市長(国民党)が、高雄環状ライトレール(軽軌鉄道、LRT)の第2段階区間を含む交通インフラについて、市民や専門家の意見を聞いた上で改めて推進を決めると表明した。

 高雄LRTは第1段階の籬仔内駅(C1)~哈瑪星駅(C14)までが昨年9月に全線開通、第2段階の哈瑪星駅~機廠駅(C37)は既に昨年着工済みだ。しかし、高雄市立美術館と大順路一帯で沿線住民などが騒音や渋滞が懸念されるとして反発、工事が停止している。

/date/2018/11/29/00takao_2.jpg高雄LRTの第1段階区間(緑色)と第2段階区間(青色)(高雄市政府捷運工程局リリースより)

 韓次期市長は「争議が起きているインフラは、当然、学者や専門家の提案を聞いてから決める」と発言した。ただ、韓次期市長の選挙対策本部の広報担当を務めた侯亜寧氏は「建設中止は下策で、可能性は非常に低い」と述べており、現時点で建設中止に踏み込むことは考えていないようだ。

交通部「全体像考慮を」

 なお、大台中山手線計画の中止の可能性が報じられたことに対し、呉宏謀交通部長は28日「前瞻基礎建設計画にようやく盛り込まれたのに、安易に中止されると残念だ。都市の全体的発展を考慮すべきだ」とくぎを刺した。

/date/2018/11/29/00top2_2.jpg高雄LRT。韓次期市長は、目先のことだけでなく、10~30年先の高雄を考えて決めると語った(28日=中央社)