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台湾をWTO提訴も、食品輸入規制の継続で


ニュース 食品 作成日:2018年11月30日_記事番号:T00080695

台湾をWTO提訴も、食品輸入規制の継続で

 福島第1原子力発電所周辺5県からの食品・農産物の輸入禁止継続を求める住民投票が成立したことに対し、河野太郎外務大臣は29日、世界貿易機関(WTO)で紛争解決手続き行うこともあり得ると表明した。蔡英文政権が規制緩和に取り組むことはなくなった中、日台関係の後退、外交・経済面におけるデメリットを懸念する声がさらに強まっている。30日付自由時報などが報じた。

/date/2018/11/30/00xie_2.jpg台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表は、住民投票は尊重し、その結果は皆で引き受けたいと述べた(29日=中央社)

 24日に行われた「福島第1原発周辺5県(福島、茨城、栃木、群馬、千葉)からの農産物、食品の輸入禁止継続」の賛否を問う住民投票は、賛成779万票(72.3%)、反対223万票(20.7%)の圧倒的多数で成立した。法的拘束力を持つため、台湾政府は今後2年間は輸入禁止措置を継続することになる。

 これに対し河野外相は29日の参議院外交防衛委員会の答弁で「極めて残念で、あらゆる選択肢を視野に対応する。当面は科学的根拠を十分に示して台湾側に働き掛けるが、WTOの紛争解決手続きに進むことも排除しない」と表明した。

 一方、中国は28日、従来輸入規制の対象だった新潟県産米の輸入解禁を発表した。米中関係が悪化した中、日本との関係改善を図る一環とみられる。現在、原発周辺地域からの農産品・食品の全面輸入禁止措置を継続しているのは台湾と中国のみで、仮に中国が段階的に規制を緩和した場合、台湾は世界で唯一、厳しい規制を続けることになる。

「全面的な影響」懸念

 日本は台湾の農産物・食品の輸入規制によって日台間の経済連携協定(EPA)締結交渉を停止するなど、関係進展には規制緩和が前提との立場を取ってきた。このため、政治大学国際関係研究センターの蔡増家研究員は「日本がWTOへの提訴を行った場合、日本が主導する『包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定(TPP11、CPTPP)』や、自由貿易協定(FTA)、漁業交渉にまで影響する。一般市民の権益や外交関係、経済交流まで影響は全面的に及ぶ」と厳しい見方を示した。

 蔡政権は、輸入解禁問題に取り組むタイミングを逸したといえる。2016年末、衛生福利部(衛福部)がこの問題に関する初の公聴会の開催を計画したが、国民党のデモ活動で中止になり、以後は「腫れ物」扱いになってしまっていた。しかし、蔡研究員は、解禁反対運動を繰り広げてきた国民党についても「仮に政権復帰となれば、自身がこの問題に直面しなければならない」と指摘した。

検出例はごくわずか

 衛生福利部食品薬物管理署(TFDA)によると、11年以降、日本から輸入した食品13万件のうち、基準値を上回る放射性物質が検出されたものはなく、微量の放射性物質が検出されたものが224件、全体の0.17%にすぎない。件数も年々減っている。このため、専門家からは輸入規制はエリア別から産品別に移行すべきとの指摘が出ている。

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 蔡研究員は、輸入規制問題の段階的解決を提案している。まず日本との間で細則を含む食品安全協定を結び、日本からの食品輸入を具体的な法規に基づいて行い、食品の安全確保と日台関係の維持を同時に狙うというものだ。また、規制対象の県のうち福島原発から最も遠く、影響の少ない千葉県は最初の解禁エリアになり得るとして、観察期間を設けて取り組むことを提言した。

【表】