ニュース その他分野 作成日:2018年12月3日_記事番号:T00080719
米中首脳会談で貿易戦争の一時停戦が決まったことで、世界経済の悪化要因に当面の歯止めが掛かったとして安堵(あんど)感が広がっている。台湾では週明けの3日、株価が大幅に上昇し、ほぼ2カ月ぶりに株式市場の加権指数が1万ポイント台を回復した。一方、識者からは、今後の米中交渉の行方が不確定なことから、台湾企業は中国からの生産拠点移転のペースを緩めるべきではないとの指摘が出ている。3日付自由時報などが報じた。
習主席はG20首脳会議で、中国の一層の市場開放をアピールしつつ、米国を念頭に置いた従来の保護主義批判は封印し、対米協調の姿勢に徹した(1日=中央社)
20カ国・地域(G20)首脳会合に際してアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで1日行われた米中首脳会談で、トランプ米大統領は、来年1月1日に予定していた2,000億米ドル分の中国製品に対する現行10%の関税の25%への引き上げを90日間延期することに同意。習近平中国国家主席は、米国との貿易不均衡を是正するため、米国から大量の農産品やエネルギー、工業製品などを輸入するとした。双方はまた、強制的な技術移転、知的財産保護、非関税障壁、サイバー侵入やサイバー窃盗、サービス、農業などに関する「構造改革」についての協議を即座に開始し、90日以内の合意を目指すことで合意した。合意できなかった場合、延期された関税の25%への引き上げが実施される可能性がある。
「米国にも不利」
米中合意について、台湾経済研究院(台経院、TIER)の孫明徳景気預測センター主任は「一時停戦であって終戦ではない」と注意を促した。双方の摩擦は来年、「延長戦」となって継続するか、知的財産権訴訟や為替レートなどの関税以外の分野に「転戦」するとみている。
今回の合意の背景には、米国側に貿易戦争の拡大は米国にとっても不利との認識があったと指摘した。アップル株がさらに下落すれば米国経済にも悪影響を及ぼすこと、制裁関税の枠を通信製品にも広げた場合、米国の消費者が製品価格の上昇を負担しなければならないことなどから、米国内の圧力が大きく高まっていたと分析した。
その上で、今後、合意の多くの前提条件をクリアできるかは未知数で、台湾企業は「停戦」で安心することはできず、中国からの生産拠点の移転ペースを落とすべきではないと提言した。
証券会社からは、株式市場が電子銘柄を中心に再び活気づき、台湾では加権指数が再度1万ポイント台を上回るとの見方が出された。実際、3日の株式市場は、光電、電子部品、半導体などのセクターがけん引し、終値は1万137.87ポイントと前営業日比249.84ポイント(2.53%)の大幅上昇となり、10月9日以来の1万ポイント台を回復した。
台塑化「これ以上悪化しない」
企業からは「来年の経済は今より悪くなることはない」との見通しが出された。台塑石化(フォルモサ・ペトロケミカル、台塑化)の曹明総経理は「米国が制裁関税を25%に引き上げれば、石油化学のみならず他の多くの産業へ波及すると懸念していた。しかし、交渉継続によって当面、貿易戦争はさらに悪化することはなくなった」と語った。
曹総経理は合意の背景については、25%への引き上げとなった場合、中国製品が米国市場で競争力を失い打撃が大きいため、習主席が譲歩したとの見方を示した。
NXP買収、中国容認へ
米中首脳会談ではまた、習主席が、携帯電話用半導体大手、米クアルコムによる蘭NXPセミコンダクターズの買収計画について、再度の申請を行えば認める考えを示唆した。同計画は今年7月、中国独禁当局の承認を得られず、クアルコムのスティーブ・モレンコフ最高経営責任者(CEO)が買収は困難との認識を示していた。
買収が実現した場合、クアルコムにとって車載用半導体分野の開拓で大きなプラスとなるため、台湾のIC設計最大手、聯発科技(メディアテック)に圧力となる。
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