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台南の漢方薬店、生き残りにあの手この手


ニュース 社会 作成日:2018年12月11日_記事番号:T00080898

台南の漢方薬店、生き残りにあの手この手

 台南市は古くから漢方薬の卸売り、小売りが盛んなことで知られるが、西洋医学の普及や規制の強化などに伴い、市内の漢方薬店は大幅に減少。老舗店では生き残りをかけてさまざまな取り組みが行われている。

/date/2018/12/11/19cm_2.jpg博仁堂の店舗。いつまでも伝統を守り続けてほしい(同店フェイスブックより)

 台南市では明朝時代末期に漢方薬の卸売りが始まり、清朝時代には中国からさまざまな薬材が輸入された五条港や、かつて「十字大街」と呼ばれた現在の中西区を中心に数多くの漢方薬店が軒を連ねるようになった。

 日本統治時代には西洋医学の導入に一定の圧力を受けたものの、漢方薬産業の火は途絶えることなく、台湾経済が飛躍的な成長を遂げた1990年前後には、地元の富裕層が家族のためにまとめ買いをしたり、台北から贈り物として高級な漢方薬を買い求めに来たりと最盛期を迎えた。

 なお漢方薬店は通常、世襲制を採っており、薬剤の調合方法や経営方針が父から子へと代々伝えられている。現在、台南市中西区には約100年にわたり経営を続ける老舗店が7店存在するが、店ごとに看板となる漢方薬が異なる。

 ただその後、時代が移り、漢方薬を購入する人の数も少なくなっていき、さらに政府の規制も厳しくなる中、ピーク時に800店を超えた台南市内の漢方薬店は現在、半分以下に減少している。

 中国の広東省に起源を持ち、戦後、台湾へと移ってきた中西区の漢方薬店「博仁堂」でも、2代目の周博仁さんが先行きを悲観して店をたたもうと考えたそうだ。しかし小さいことから、丸薬や粉薬を調合する祖父や父親を見て育った3代目の周建文さんは廃業をもったいないと考え、さらに自身が料理好きだったこともあり、薬膳料理を提供するレストラン併設店に転換して経営を継続しようと提案。これが奏功し、多くの観光客が訪れるようになったという。

 また台南市北区で数十年続く「永義豊中薬行」の4代目、蔡宗翰さんも、客が大幅に減っていた6~7年前、同店で継承されてきた知識と成功大学で基礎医学研究の博士号を取得した自身の経歴を基に開発した漢方薬ドリンクや有機食品などを販売する多角経営へとかじを切った。現在は2店舗を展開しているが、今後は5店舗まで拡大し、さらに新たな事業も計画している。

 若い世代が新たなアイデアで需要を掘り起こすことで、漢方薬店が全く姿を消してしまうということはなさそうだ。