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「92共識」拒否、蔡総統が呼び掛け


ニュース 政治 作成日:2019年1月7日_記事番号:T00081326

「92共識」拒否、蔡総統が呼び掛け

 蔡英文総統は5日、海外メディアのとの懇談会の席上、「1992年の共通認識(92共識)」は、北京当局によって「一国二制度」と定義された以上、あいまいな解釈を許す余地はなくなったと指摘。台湾のあらゆる政党が今後は「92共識」を提起せず、「一国二制度拒否」を明確に表明することを期待すると語った。6日付自由時報などが報じた。

/date/2019/01/07/00top1_2.jpg海外メディアのとの懇談会で「一国二制度」拒否を表明する蔡総統。統一地方選の大敗後、かえって笑顔が増えた印象だ(5日=中央社)

 中国の習近平国家主席は今月2日、「92共識」について、「一つの中国に属する両岸(中台)が、国家の統一を求める92共識で合意した」と表明。台湾に適合した「一国二制度」を提起する考えを述べていた。台湾では国民党が「92共識」について「一中各表(一つの中国、それぞれの主張)」との解釈を示し、大陸は中華人民共和国、台湾は中華民国との立場を取っているが、中国政府は「それぞれの主張」を認めたことがなく、「『一つの中国の原則』の下での一国二制度による統一」以外の選択肢はないとの主張を強めている。このため蔡総統は、中国側が「それぞれの主張」を排除した現状では「92共識」にもはや意味はなく、統一攻勢が強まる中、台湾は一致して一国二制度による統一に反対する立場を国際社会に主張すべきとの考えに達したとみられる。

 蔡総統は、習主席が台湾の各政党と協商を行うと発言したことも含めて、台湾の民主メカニズムを無視し、台湾の最大の核心利益に触れるものであり、絶対に受け入れないと強調した。その上で、一国二制度を拒否する理由として、中国が民主体制を欠いていること、人権の実績が良くないこと、台湾への武力行使の選択肢を放棄していないことの3点を挙げた。

国民党は批判

 野党国民党の呉敦義主席は、習主席の談話は、台湾の海峡交流基金会(海基会)と中国の海峡両岸関係協会(海協会)の間で合意された「両岸(中台)は共に一つの中国の原則を堅持するが、その含意については、双方がそれぞれの主張を口頭で表明することにした」とは異なるが、それでも92共識は両岸の平和と安定的発展の重要な基礎であり、完全否定する蔡総統は間違っていると指摘した。

 馬英九前総統も、「一つの中国は中華民国だ。大陸(中国)がどう表明しようが、われわれは中華民国を堅守すべき立場だ」と表明。蔡総統は92共識を拒否しては両岸の問題を解決できないと訴えた。

蔡総統、アピールを強化

 蔡総統は同日までにフェイスブック(FB)に英語や日本語をはじめ25種類の言語で「台湾は断固として『一国二制度』を受け入れません。台湾の民意の圧倒的多数は『一国二制度』に強く反対しています。これは『台湾コンセンサス』です」と書き込んだ。

 蔡総統は今年に入ってから連日FBに記事を投稿しており、「いいね」の累計件数は120万件に上っている。惨敗した統一地方選挙後に、アピール不足が人気低下の理由の一つとの批判が起きたことから、来年の総統選で再び党公認候補を狙う上で、戦略を切り替えたとみられる。

 蔡総統が元日の談話で中国に呼び掛けた▽中華民国台湾が存在している事実の正視▽2,300万人が自由民主を堅持していることへの尊重▽双方の分岐は平和、対等な手段で処理すること▽政府から権限を受けた公権力機関によって交渉を行うこと──の4点に対しては、蒋経国元総統の孫で国民党の蒋万安立法委員も、蔡総統は正しく、特に中華民国の存在の事実の正視を求めたところが正しいと指摘。習主席の92共識に関する談話は受け入れられないとした。

 蒋立法委員はこのため、多くの国民党支持者から「台湾独立派」「不孝者」との批判を受けたが、蒋経国元総統の路線の核心は「反共、親米、台湾保持」であり、作家の馮光遠氏は「蒋元総統は中国共産党を全く信用していなかった」と指摘した。

民進党主席補選、卓氏が圧勝

 なお、民進党は統一地方選の大敗で蔡総統の党主席辞任を受けて行った主席の補欠選挙で6日、主流派の卓栄泰・前行政院秘書長が2万4,699票、得票率72.6%を獲得、游盈隆・台湾民意基金会董事長の9,329票、27.4%に圧勝した。投票率はわずか16.9%だった。9日に就任し、任期は2020年5月19日まで。

/date/2019/01/07/00top2_2.jpg勝利宣言を行う卓氏。今後の選挙を勝利に導くことが重要と語った(6日=中央社)

 補選は蔡英文派と反蔡英文派の争いとみられたが、卓氏は党内の特定の有力者と特に結び付きが強いわけではないようだ。民進党内や支持者の間では、統一地方選大敗を招いた蔡総統は20年総統選の候補者としてふさわしくないとの声は根強く、今後の候補者選びの展開が注目される。