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「25年の脱原発」継続へ、産業界は失望


ニュース 公益 作成日:2019年2月1日_記事番号:T00081845

「25年の脱原発」継続へ、産業界は失望

 蔡英文政権の主要政策である「2025年の脱原子力発電達成」が継続されることとなった。同政策は昨年11月の住民投票で見直しを求める民意が示され、経済部が検討を進めてきたが、地元の反発などにより原発推進は困難との結論を下した。産業界は、電力供給の不安定化と電力料金の値上がりを招くとして強い失望感を表明した。1日付聯合報が報じた。

/date/2019/02/01/00top_2.jpg沈経済部長(左)は、既存原発の稼働延長をしなくても電力供給に問題はないとの認識を示した。メディアからは政治的思惑に重きを置いた判断との批判が出ている(31日=中央社)

 昨年11月の統一地方選挙と同時に行われた住民投票では、エネルギー政策関連で、▽25年の全原発停止を明記した「電業法」条文の削除▽火力発電量を毎年1%以上削減▽石炭火力発電所の新設・拡張停止──の3件が成立。投票結果は拘束力を持つため、経済部が政策の見直しを進め、31日にその結果を発表した。

 沈栄津経済部長は「電業法」の条文削除は既に昨年12月に完了したと説明した上で、各地の原発の現状について、第1原発(新北市石門区)は廃炉に着手しており、第2原発(新北市万里区)と第3原発(屏東県恒春鎮)の稼働延長は、▽第2原発は行政院原子能委員会(原能会)の決めた申請期限を既に過ぎている▽地元住民の反対▽放射性廃棄物の保管場所がない▽予算に立法院の審査が必要──などの理由から検討しないと説明した。

 第4原発(新北市貢寮区)については、▽立法院で廃炉を求める決議が行われている▽メーカーの生産停止や休止で予備部品の取得が不可能▽米ゼネラル・エレクトリック(GE)本体が既に原発事業から撤退しており契約の見直し交渉が不可能──などの要因から少なくとも6~7年は作業再開が困難との認識を示した。

 すなわち、住民投票で求められた「電業法」の条文削除は行ったものの、その背景にある「脱原発」見直しを求める民意には向き合わず、客観的条件と原発の地元民意を理由に既存原発の稼働延長を否定して、事実上、脱原発政策の継続を宣言したといえる。

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火力発電、20年まで1%削減

 一方、「火力発電量を毎年1%以上削減」について沈経済部長は、住民投票が効力を持つ2年間の19年と20年は遂行でき、それぞれ23億キロワット(kW)、46億kWを削減するが、21年は削減した場合、電力供給不足に陥ると説明した。

 25年段階の電源構成については、再生可能エネルギーで20%との目標を維持、残り80%は執行状況と外部環境に応じて検討を進めていくとした。現時点では天然ガス50%、石炭30%となっている。原発はゼロとの目標に変更はない。

「歴史に責任負う」

 経済部能源局(エネルギー局)が先月上旬、電源構成比の目標達成時期を25年から30年に5年先延ばしすると表明していたため、産業界は、原発が改めてエネルギー源として位置付けられる可能性を期待していたが裏切られた。このため重鎮から失望表明が相次いだ。

 林伯豊・中華民国工商協進会(CNAIC)理事長は「非常に間違っており、将来、歴史に責任を負うことになる」と脱原発政策の継続を強く非難した。原発の稼働継続なしでは電力供給が不足し、電力価格は上昇、台湾に進出する企業はなくなり、台湾企業も生存できない深刻な事態になると指摘した。

 19年度の電力買い取り価格(20年間固定)が1キロワット時(kWh)当たり5.516元に決まった洋上(オフショア)風力発電についても「建設がうまく行くのかまだ分からない上、買い取り価格は世界一高い。また、風力発電は冬に発電した電力を夏に使うものだが、台湾は電力貯蔵設備が足りない。大気汚染問題も解決できない」と批判した。

第4原発稼働求める住民投票も

 「25年の全原発停止を明記した『電業法』条文の削除」を求める住民投票を推進した黄士修氏も、沈経済部長を「恥知らず」と批判した。その上で、「第4原発の再開、商業運転」の是非を問う住民投票を、来年1月の総統選挙と同時に実施に向けて改めて提案する考えを示した。第4原発の稼働は、本気で取り組めば3年でできるとの認識だ。

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