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郭台銘氏が参戦、国民党指名レース一変


ニュース 政治 作成日:2019年4月18日_記事番号:T00083042

郭台銘氏が参戦、国民党指名レース一変

 鴻海精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長が17日、来年の総統選挙を視野に、野党・国民党の予備選挙に出馬する意向を正式に表明した。同党は、支持層に最も人気のある韓国瑜高雄市長を擁立する方針と伝えられていたが、郭氏参戦で状況は一変。経済分野の実績で郭氏の右に出る者はなく、一挙に指名レースの有力候補に浮上した。

/date/2019/04/18/00top_2.jpg国民党から授与された名誉賞状を掲げる郭氏。中台関係については「馬英九路線」こそが正しいとの信念を持つという(17日=中央社)

 国民党の呉敦義主席は、17日の中央常務委員会で郭氏に「党中央委員会名誉賞状」を手渡した。同党の規定では、予備選挙への立候補には4カ月以上の党籍が必要で、郭氏は党籍を維持していないとみられていた。しかし同党は「郭氏は1970年に入党した50年の党歴を持つ党員だが、2000年に党員の再登記作業を行った際、本人が多忙なため再登記を求める連絡ができていなかった。郭氏自身は党員であると考えている」との見解を発表。同時に、名誉賞状の授与理由として、財務が窮迫していた16年に、郭氏から母親名義で4,500万台湾元(約1億6,400万円)の無利息融資を受けたことの貢献を挙げた。これによって党籍問題は事実上クリアされた。

 郭氏は「予備選挙に参加し、擁立指名は決して受けない」との立場を再度表明した。同時に国民党に対し、公正、公開かつ民意に沿った予備選挙を実行するよう呼び掛けた。

支持率は拮抗

 国民党は、韓氏が予備選出馬を拒否していることから、市民へのアンケート調査の結果を基に、韓氏擁立を強行する構えと伝えられていた。しかし、郭氏が予備選挙の実施を訴えたことで、韓氏の指名強行は困難な情勢となった。両者は共に経済発展を訴えているが、実績面では郭氏は韓氏を圧倒的にリードしており、有権者の支持が期待できる。ETtoday新聞網が17日に行った支持率調査によると、韓氏51%に対し郭氏49%でほぼ拮抗(きっこう)している。韓氏擁立を目指して17日から署名活動を計画していた国民党の台北市議会議員団は、郭氏に配慮して急きょ活動を中止した。

 国民党は候補者の選定方法の決定が求められている。18日付聯合報によると、中央常務委員からは、正式な予備選挙は行わない一方、韓氏を含めて市民へのアンケート調査を実施し、最も支持率が高い人物を候補に指名するといった案が出ている。

クックCEOが電話

 郭氏が国民党の総統候補となり、当選した場合、鴻海の経営に影響が出ることは必至とみられている。18日付経済日報によると、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)が16日に郭氏に直接電話を掛け、意向をただしたとされる。鴻海の内部事情に詳しい関係者は「郭董事長とクックCEOは20~30年来の友人であり、鴻海がアップルの主力受託生産メーカーである以上、関心を寄せるのは当然」と話した。

中国資産がアキレス腱に

 郭氏は予備選出馬表明に当たり、「平和、安定、経済、未来」の標語を掲げた。中国政府に人脈があり、中台関係を改善できることは確実だ。

 しかし、鴻海は中国で、iPhoneの主要生産拠点である鄭州(河南省)をはじめ30カ所以上の生産拠点を構えており、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)、半導体など今後中国で注力する主力ビジネスは多い。総統に就任した場合、グループの膨大な中国資産が中国政府によって圧力の材料として使われないか、大きな懸念が存在する。