ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム グループ概要 採用情報 お問い合わせ 日本人にPR

コンサルティング リサーチ セミナー 経済ニュース 労務顧問 IT 飲食店情報

義父母殺害容疑のイラク人、出境で捜査困難に


ニュース 社会 作成日:2019年5月2日_記事番号:T00083303

義父母殺害容疑のイラク人、出境で捜査困難に

 台北市士林区の住宅で1日、70歳の夫婦が殺害された遺体で発見された。警察の調べで、容疑者として娘婿に当たるイラク人の男が浮上したが、既にイラクに帰国したもようで、台湾は同国と正式な外交関係も交流も持たないことから、今後、男に対して法的責任を追及することは困難なようだ。

/date/2019/05/02/20iraq_2.jpgジュマー容疑者。近所の住民は、夫婦は男に小遣いを渡すなど大事にしていたのに、恩をあだで返されたと話している(1日=中央社)

 死亡した夫婦には息子と娘がおり、娘は米国に留学中に知り合ったイラク出身のアリ・ハマッド・ジュマー容疑者(31)と日本で結婚。1年ほど前に男児を出産した。

 昨年12月、同容疑者が妻に暴力を振るうようになった。その後も夫婦関係は改善せず、妻は4月に台湾に戻り、子供を両親に預けて故宮博物院でガイドの仕事をしていた。

 そんな中、ジュマー容疑者は息子に会いたいと4月27日に来台し、28日に士林区の義父母の家へ向かったが不在だったことから、29日に再度訪問。子供の養育権を巡り双方の間で言い争いが生じ、かっとなったジュマー容疑者が義父母を絞殺したとされる。

 1日、通報を受けて捜査を開始した警察は、ジュマー容疑者を指名手配したが、既に30日午前の航空便で子供を連れて日本に向かった後だった。1日午後、夫婦の遺体を発見した息子が警察の事情聴取に応じていた際、ジュマー容疑者から電話があり、子供とともにバグダッドに戻ったとの説明を受けたが、事件については何も話さなかったという。

 法務部は、台湾と日本、イラクの間では刑事共助条約が締結されていないため、捜査協力を求める場合は個別に協議する必要があると指摘。しかし、両国とは国交がないことから、犯罪者の指名手配や移送などの捜査協力については実務上の困難が予想されると説明した。

 台湾は国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)に加盟していないが、国際犯罪に関する重要な情報を日本を通じてICPOとの間でやりとりしている他、麻薬事件や詐欺事件などの捜査については日台間で協力が行われている。

 一方、イラクのようにほぼ政府間の対話チャネルが存在しない国に犯罪者が逃亡した場合、現実的に捜査は難しい。残念ながら今回、ジュマー容疑者の罪を追及し、妻が子供を取り戻せる可能性は低いと予想される。