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米中貿易戦争再燃、電子需要回復に懸念


ニュース その他分野 作成日:2019年5月7日_記事番号:T00083357

米中貿易戦争再燃、電子需要回復に懸念

 トランプ米大統領が中国からの輸入品2,000億米ドル相当に対する制裁関税を10%から25%に引き上げると表明したことを受けて、台湾では電子製品需要の回復が遠のくとの懸念が高まっている他、工作機械の中国向け輸出の減少が続きそうだ。台湾の今年の経済成長は、Uターン投資による生産回帰と中国からの転注獲得が鍵を握りそうだ。7日付経済日報などが報じた。

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 行政院主計総処の朱沢民主計長は6日、今年の実質域内総生産(GDP)成長率は2%を維持できるとの見通しを示した。ただ、最新予測値の2.27%を維持できるかについては明言を避け、投資が増加すれば上回ることもあると述べるにとどめた。

 一方、元大宝華綜合経済研究院の梁国源院長は、台湾は米中への経済依存度が高く、2%維持は困難との見通しを示した。

 経済部は、台商(海外で事業展開する台湾系企業)が中国で米国向けに生産する製品のうち、▽ネットワーク機器▽工作機械▽ロー~ミドルエンドの自動車と部品▽石化製品▽ハンドバッグ──などへの影響が大きいとみている。

 和碩聯合科技(ペガトロン)は6日、影響を受けるネットワーク製品は既に中国以外の地域で生産していると表明した。

 この他、▽サーバー▽パソコン▽コンシューマーエレクトロニクス製品▽携帯電話部品とモジュール──なども課税引き上げ対象となっており、最終製品の需要が悪化すれば、半導体の在庫消化が第3四半期までずれ込む恐れがある。顧客は発注にさらに慎重になり、急な注文や短期の注文が増加しそうだ。

 ファウンドリーの台湾積体電路製造(TSMC)、半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)の日月光投資控股(ASEテクノロジー・ホールディング、ASEH)は、米中貿易戦争の影響は既に今四半期の業績予測に織り込み済みだと説明した。

 メモリーについては、台湾メーカーの輸出は直接的な影響は受けないものの、既に供給過剰となっているDRAMやNAND型フラッシュメモリーのさらなる価格下落を招くと懸念されている。

 最終製品では、宏碁(エイサー)が、米国向けデスクトップPCの関税が引き上がるものの、売上高構成比は1桁台前半で影響は限られると説明した。

工作機械、無給休暇増も

 工作機械については、米国向けでは台湾から輸出するため影響はないものの、中国需要は企業の設備投資減退で、昨年10月より影響が出ている。休暇日の増加が常態化している他、5月からはいわゆる無給休暇(実際には有給を含む)を実施するメーカーも出ており、当面は不利に働きそうだ。

 ただ、米中貿易戦争の過熱に伴い、今後は中国からベトナム、インド、メキシコなどへ生産を移転するメーカーの新規設備需要が見込まれ、有利に働く面もある。

10分野以上で転注期待

 経済部の分析によると、▽ねじ▽ナット▽リニアガイド▽モーター▽鉄鋼▽自動車部品▽蓄電池▽変圧器▽光学製品▽ハンドツール──などでは台湾への転注が期待できそうだ。

 ねじ製品の業界団体、台湾螺絲工業同業公会は、米中貿易戦争の解決が遠のいたことで、米国市場向け輸出の大幅拡大が期待できると説明した。

 また、中国製品に対しては情報セキュリティー懸念が高まっていることから、監視・防犯製品メーカーも恩恵を受けそうだ。

 沈栄津経済部長は、情報セキュリティーへの懸念から多くの製品が生産を台湾に戻しており、米中貿易戦争は台湾にチャンスをもたらすと指摘。幅広い産業に政府のUターン促進プラン「歓迎台商回台投資行動方案」の利用を呼び掛けた。

 財政部は、米中貿易戦争の再燃を受け、台湾が制裁対象に巻き込まれることを防ぐために、中国製品の台湾経由での不正輸出に対して監視を強める方針だ。

/date/2019/05/07/00top_2.jpg蔡英文総統は、台湾製品か中国製品かの区別がつきにくくなるため、自由経済モデル区構想は推進しないと表明した(6日=中央社)

【図】