ニュース 運輸 作成日:2019年6月10日_記事番号:T00083951
航空大手、長栄航空(エバー航空)の客室乗務員が加盟する労働組合は7日、投票によりストライキ権を確立した。組合側は24日以前にもスト突入の構えを見せており、予告なしの突然実施となる可能性もある。ストへの懸念から、同社の7月の予約は前年同月を下回っている。夏休みシーズンに重なった場合、1日当たり4万人以上の利用者が影響を受け、大きな混乱に見舞われることになる。8日付蘋果日報などが報じた。
4日のデモには、多数の組合員が繰り出した(中央社)
エバー航空などの航空会社の客室乗務員が加盟する労働組合、桃園市空服員職業工会は7日、68%の賛成多数でエバー航空に対するスト権を確立した。鄭雅菱・同工会秘書長は、会社側が株主総会が開かれる24日以前は協議に応じないと強硬な態度を崩していないため、それまでにストに突入する可能性もあると説明した。エバー航空側はこれに対し遺憾の意を表明。交渉の扉を閉ざすことはないとした上で、利用者の権益を考慮するよう組合側に求めた。労働部はきょう10日、労使双方を呼び、交渉再開に向けた打開策を探る。
旅行業界関係者は、組合側は6月末から7月初めの夏休みの海外旅行シーズンを狙ってストに出ると予測した。仮にストが長引けば、旅行・観光業界全体に深刻な影響が出そうだ。
エバー航空と傘下の立栄航空(ユニー航空)が夏休みシーズンに運航する国際・中国路線は1日当たり約90便で、国際・中国路線全体の24%に当たる3万7,000人が利用する見通しだ。ユニー航空は、客室乗務員の65%がエバー航空から派遣されている。
台湾域内路線では、シェア45%を占めるユニー航空便が全面欠航する可能性があり、スト突入となれば1日当たり9,000人以上に影響が出る見通しだ。
双方が態度硬化
エバー航空の労使は団体交渉20回、労使調停3回を経ても溝が埋まらず、組合側は5月13日からスト権投票に入っていた。▽日当引き上げ▽労使合意事項の団体交渉の当事者以外への適用禁止▽疲労を伴う乗務の改善──などを求めているが、投票期間中の2回の再交渉も物別れに終わっている。
一方、会社側は、ストが実施された場合▽春節ボーナス(年終奨金)の不支給▽皆勤時のフライト・休暇選択権の制限▽優待航空券の不提供──などの対抗策をちらつかせており、4日に労組側がデモを行った後は態度をさらに硬化させている。
スト予告、法整備求める声も
台湾航空業界では、2016年6月に中華航空(チャイナエアライン)の客室乗務員が航空業界で初めてのストを実施、今年2月には同社の操縦士(パイロット)がストを実施したが、海外のようなストの予告期間がなく、利用者に大きな混乱をもたらした。ストの予告期間を定める複数の法案が提出されているが一本化には至っておらず、労働部は反対姿勢だ。
この他、17年には、エバー航空の客室乗務員が台風襲来の際に集団で休暇を取り、運航に影響が出た。今年5月には、中堅航空会社の遠東航空(ファーイースタン航空)が、使用機材の飛行制限時間超えにより国際・中国線の一部運休を突然発表した。
四方を海に囲まれ航空輸送の重要度が高いにもかかわらず、労使対立やマネジメント不備で公共交通機関としての責任を果たせない状況が散見される。
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