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「香港デモ知らない」、韓市長失言で波紋


ニュース 政治 作成日:2019年6月11日_記事番号:T00083977

「香港デモ知らない」、韓市長失言で波紋

 香港で「逃亡犯条例」改正に反対する100万人以上の大規模デモが繰り広げられた9日、韓国瑜高雄市長がデモに関するメディアの質問に「よく分からない。知らない」と答えたことが波紋を呼んでいる。韓氏は総統選に向けた野党・国民党の予備選レースで依然先頭を走っているが、無知であれ、中国政府への迎合であれ、総統候補としては資質に問題があるとの認識が広がっている。11日付自由時報などが報じた。

/date/2019/06/11/00top1_2.jpg韓市長。今月台北市などで開いた支持集会は大きな盛り上がりを見せ、人気の健在ぶりをアピールしたが、総統選まで継続できるのか疑問符も付く(中央社)

 韓氏は発言について翌10日、「初めて(端午節の)ドラゴンボートレースに参加して太鼓をたたき、太鼓の音で頭がくらくらしていた。そこに記者から突然質問を受けたので、ちょっと理解に時間が欲しいと言ったものだ」と釈明。その上で、「大多数の台湾人は、香港の一国二制度が成功でも失敗でも、台湾には適用されないとの認識だ」との声明を発表し、失言の火消しに努めた。

 韓氏は同日、国民党予備選に正式に立候補した。昨年11月の統一地方選で同党を大勝利に導いた立役者であることから、依然候補者の中で最も人気が高く、民進党政権への逆風が続く中で総統に当選する可能性はある。一方で香港の現状は、台湾では中国が呼び掛ける一国二制度の失敗例と認識されており、大規模デモへの「知らない」発言は、総統候補としての資質に改めて疑問が投げ掛けられる結果となった。

 高雄市議会の野党側からは、「知らない」は中国政府への迎合発言との批判が出た。時代力量の黄捷市議は「(3月の香港訪問時に)中国中央人民政府聯絡弁公室(中聯弁)を訪問した総統選候補者(韓氏)は、立場表明に踏み込まなかった」と批判。韓氏の中聯弁訪問は当時、一国二制度への黙認と指弾されていた。民進党の高閔琳市議は「香港特別行政区行政長官と中聯弁主任から頭をなでられた韓氏が、103万人が参加したデモのような『小事』を知らないことは当然だ」と皮肉った。

郭氏「中時に操られている」

 国民党予備選で韓氏を追う鴻海精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長は10日記者会見を開き、韓氏を持ち上げつつ、自身(郭氏)へのネガティブキャンペーンを続ける中国時報を批判した。韓氏は中国・国務院台湾事務弁公室(国台弁)が背後に控えるメディア(中国時報)に操られていると述べつつ、同紙を発行する旺旺中時媒体集団の偏向報道の目的は、中国での利益のために国台弁の歓心を買うことだと同グループの蔡衍明総裁を糾弾した。

/date/2019/06/11/00top2_2.jpg中国時報に激怒する郭董事長。韓氏を「中国に肩入れされた政治家」と印象付けることを狙った(10日=中央社)

 これに対し中国時報は翌11日、「郭氏の事業は極端に中国に依存している」との記事を掲載し、郭氏は総統に不適切と示唆した。

朱氏「国民党最大の危機」

 郭氏は韓氏の失言を機に追い上げを狙ったとみられるが、国民党予備選は現在、韓氏の支持率が低下傾向であるものの、郭氏も支持率が上昇しない状況となっている。これについて自身も予備選に立候補している朱立倫前新北市長は10日、「国民党にとって最大の危機」と懸念を表明。朱氏は、国民党は半年前、与党・民進党を支持率で10%前後リードしていたのに、民進党が5~6ポイント上昇し、国民党が4~5ポイント下落した結果、今は大差がないとの認識を示した。

 国民党は期待の星である韓氏の資質問題の他、候補選出を巡る候補者同士の闘争、総統選に向けて党としての主張が不明確なことが、いずれもマイナス要素となっている。