ニュース 電子 作成日:2019年6月24日_記事番号:T00084217
鴻海精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)氏(68)は21日、董事長を退任した。7月1日より半導体事業を担うサブグループ「S次集団」の劉揚偉総経理(62)が董事長に就任する。創業45年で鴻海を町工場からEMS(電子機器受託生産サービス)世界最大手に育て上げた郭氏が第一線から退いた鴻海は、劉氏中心の共同経営体制で、半導体事業を強化するとみられている。24日付経済日報などが報じた。
左から新董事長の劉氏、郭氏、新副董事長の李氏。劉氏は「話は次回」と述べ、所信表明はなかった(21日=中央社)
郭氏、復帰に含み
鴻海は同日の董事会で、董事長に劉氏、副董事長に李傑・富士康工業互聯網(フォックスコン・インダストリアル・インターネット、FII)副董事長を選出した。郭氏を含む董事は5人、独立董事(社外取締役)は3人。郭氏の董事長退任に伴い、22~30日の間は、呂芳銘・グループ副総裁兼亜太電信(アジア・パシフィック・テレコム)董事長が鴻海董事長職を代行する。
鴻海は今後、重大決議事項が発生した際、まず「経営委員会」のうち董事長以外の8人で採決を取って董事会に提出し、董事長が最終決定する。ただ、1974年の創業以来、郭氏がワンマン経営で従業員100万人以上を束ねてきた鴻海で、果たして共同経営体制がうまく機能するのか不安視する声もある。
郭氏は、今後鴻海の経営に干渉したり、鴻海に戻ることはないと表明した。ただ、事前に準備された映像の中では、総統に当選して退任した後は、また株主のために尽くしたいと話しており、こちらの方が本音かもしれない。
株主3,000人以上が集まった株主総会で、郭氏は「今後は単なる出資者なので、郭董事長でなく郭台銘と呼んでほしい」と語った(21日=中央社)
新董事長、郭氏の側近
郭氏は、新董事長の劉氏は電子業界で長期の経験を持つ半導体の専門家で、グループのハードウエアを統合でき、新副董事長の李氏は産業用モノのインターネット(IIoT)などソフトウエアの専門家で、鴻海の大きな力になると説明した。
劉氏は交通大学電子物理系卒業。米国でマザーボードメーカーを起業して鴻海に売却、台湾でIC設計会社の総経理を務めた経歴があり、半導体業界で豊富な経験と人脈を擁する。2007年より郭氏の特別助理(特別秘書)を務め、郭氏をよく理解している。17年に設立された鴻海S次集団の総経理に就任、今年3月には鴻海傘下の半導体設備メーカー、京鼎精密科技(フォックスセミコン・インテグレーテッド・テクノロジー、fiti)の董事長に就任した。S次集団の鴻海グループに対する売上高貢献は1%未満。
李氏は、FII副董事長で人工知能(AI)分野に精通している他、米中貿易戦争の動向に詳しく、鴻海の米国ウィスコンシン州でのパネル工場投資を担当している。
ポスト郭台銘時代について市場では、鴻海グループは半導体事業の中でも、異なる製造プロセスのチップを統合するヘテロジニアス(異種混在)マルチコアをターゲットに定め、傘下の半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)メーカー、訊芯科技控股が重要な役割を果たすとみられている。この他、フォックスセミコンや帆宣系統科技(マーケテック・インターナショナル、MIC)、樺漢科技(エノコン)などが鴻海グループの半導体事業を支える。
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